創業計画書を専門家に診てもらおう!

 

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早く起業したい。めっさお金稼ぎたい。いてもたってもいられず、甲府商工会議所にやってきました。商工会議所といえば企業の相談スペシャリスト!専門家に創業計画書を見ていただくことで太鼓判を押してもらい、大手を振って公庫へ融資を持ちかける寸法です!我ながら素晴らしい段取り。早速アポを取った経営支援課の方にお話を伺うことにしました!

 

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甲府商工会議所 中小企業振興部経営支援課 課長 中沢幸春さん

 

 

え…課長さん直々にお話を?ちょっと待ってください。わざわざお話を聞いてくださるのはありがたいんですが、最初から課長クラスの方にこの創業計画書をお見せするのはハードルが高いというか胃が痛いというか(若干半ベソ)。でもここまで来たら私の熱意をぶつけて、経営支援課課長お墨付きの創業計画書にしてもらおうじゃありませんか!

 

 

-はじめまして。ヴィスコです。本日はお忙しい中ありがとうございます。早速創業計画書をご覧ください。公庫から600万ほどの融資をお願いしようと思ってるんです。

はじめまして。中沢です。よろしくお願いします。

拝見させていただきます。う〜ん。

 

-いかがですか?通りそうですか?

ダメですね。全部ダメです。

 

-え!?何がダメなんですが!?

まず事業内容が明白じゃないですよね。創業計画書には収まりきらないと思うんで、別紙を用意する必要があります。

 

-これだけじゃ足りないってことですね。

はい。私もサバイバルゲームというものは聞いただけで実際どういう内容かわかりませんが、これだけでは説明不足です。

 

-徹夜で一生懸命書いたのに…。

それと圧倒的に経験が足りていないと思いますよ。この分野に関する仕事に携わってきたり、趣味であっても実績があったり。まずは経験を積まないと独立っていうのは、どの事業でも難しいですね。

 

-あぁ、ええ。そうですよね、はい。

あと資金面でも記入不足な部分がありますよ。まず金融機関から融資を受けるなら支払い利息が発生します。仮に3パーセントの金利で600万円を借りたとすると、ざっくり月2万円くらいは経費として乗っかるはずです。また経費の「その他」の内訳も記述がないですよね。だいたい皆さん概要欄に記入してくるんですが・・・

 

-ヒィィィ!もうやめて、やめてください!砕けます!ガラスのハートが飛び散っちゃいますから!

自己資金ゼロもマズイですね。公庫からお金を借りる場合は、借入金の30パーセントの自己資金を用意しないと。仮に自己資金がなくても、例えば両親が資産家であったり、実家が3ヘクタールくらいの畑を持っている農家であったりすれば、銀行に相談してもチャンスはあるかもしれません。

 

-しがないフリーライターにそんなバックボーンはありません…(消沈)

そうですか。何はともあれ、現状では公庫からも銀行からも融資を受けるのは難しいでしょう。他の機関からなら借り入れられるかもしれませんが。

 

-え?本当ですか!?やった!金さえあれば起業できます。いやぁ、中沢さんも人が悪いや〜。これで私も社長ですよ、社長。

ちょっと待ってください!あなたの目的はお金を借りることですか?そうではないですよね。お金を借りるだけなら、事業内容をまとめて書類を揃えれば受けられるかもしれません。でも大切なのは会社を継続させて、生活していくことですよね?生活するのにお金が必要なんですよね?もっと需要がどこにあるのか、とかどれくらい売り上げ見込めるのか、とか調査してからでないと続きませんよ。

 

-ごもっともでございます…。

例えばお金を借りて起業した場合、宣伝をすると思います。広告費は当然かかるわけで、それも上限があります。いい加減に宣伝して回ってもお金が出て行くばっかりで、ちっとも効果が得られませんよ。それと創業計画書の売り上げ見込みにも無理がありますね。例えば。

 

-あ、あー!!そうだ、ちょっと話変わるんですけど、これまで相談に来た中でちょっと珍しい内容の起業相談って何かありましたか?

え、あぁそうですねぇ…。

 

-(ふぅ、うまく話を反らせた)

リーマンショック前後の話になりますけど、製造業の起業相談が過去にありました。今のご時世で新しく製造業を始めようって人、なかなかいませんからね。その人は重機の部品のリース会社にもともと勤めていたんですが、業者からの話や自身の体験から既存のアタッチメントが使いにくいと考えていたそうです。使いやすい部品を開発すれば、きっと需要があると思い資金を貯め起業に踏み切ったと言っていました。その人も現場の声や自分の経験を元に計画性を持って行動したんですよ。

 

-まるでマーケティングも勤務経験も自己資金もないのに起業しようとしている人がいるかのような口ぶりですね。

あなたのことです。

 

-すいません、そうでした。他にはどんな方がいらっしゃいましたか?

先ほど宣伝の話が出たので、ケーキ屋さんの話をしましょうか。その人は有名洋菓子チェーン店の150m先に個人でお店を作りました。

 

-いや、自殺行為にしか思えないんですけど。

いえいえ、そんなことありません。その人は自分の腕に自信があったんです。近くに有名なチェーン店があれば、労せず近所に人は集まってきます。宣伝しなくても食べてもらえるチャンスがあり、実際美味しいケーキを提供できたから繁盛しているんですよ。

 

-その発想力がすでに成功者ですね。

その人も趣味でケーキ作りをしていたわけではなく、有名ホテルの料理人として働いていました。そこで洋菓子の原材料会社から誰か東京で店を経営してくれる人はいないか、と聞かれたところ自分で名乗りを上げ東京に雇われ店長として勤務し、頃合いを見て独立したんですよ。

 

-発想力だけじゃなく計画性も…。サインもらいに行きたいくらいです。

それだけじゃありません。出店の前に付近の洋菓子店を回って、どんなケーキに需要があり、どれだけ売り上げているのかリサーチしていました。もちろん、店主が売り上げを教えてくれるわけではないので売れ筋商品やお客さんの出入りをデータでまとめたそうです。そして実際の売り上げとデータから算出した数字はほとんど誤差がありませんでした。

 

-生きているのが恥ずかしくなってきました。地中深くに埋まって眠りたい気分です。

それでも私はいろんな方に起業していただきたいと思ってますけどね。若い人たちにもチャレンジしてもらいたい。ただ、そのためには世間を知らないと。学生で起業を目指すのも結構ですが、やはり自分で現場に立って学び周囲の意見をよく聞いてから行動するのが大切です。ご両親だって社会人の先輩ですから、自分の将来について雑談程度でもコミュニケーションをとるのが大切ですよ。

 

-めちゃくちゃいい話まで…ありがとうございます。この創業計画書を鼻紙にでもしてゴミ箱へホールインワンするつもりでしたが、やめておきます。もっと色々勉強して、頑張ります。今日は本当にありがとうございました!

はい、ありがとうございました。

 

 

中沢さんは色んな起業家を見てきた方です。きっと成功も失敗も数え切れないほど見てきたでしょう。でも中沢さんはおっしゃっていました。今事業者数が減ってきているそうです。それはそれぞれの企業が発展し、新しいことに挑戦せず衰退した結果。同じやり方を繰り返していても広がりはなく、どんどん縮小してしまいます。だから既存の企業はもちろん、これからも起業する人が増えて社会が活性化することを願っています、と。

中沢さん、本当にありがとうございました!フリーライターで食いっぱぐれそうな時はまた相談に伺います!

 

まとめ

  • 起業するためには計画性と経験が必要
  • お金は簡単に貸してくれない
  • 大切なのはお金を稼ぎ続け、継続させること

お金が欲しいという私の戯言から始まった開業話の中で、気づいたことがあります。お金は自分の生活のため、そして暮らしを豊かにするために存在します。お金の価値は稼ぐことにありません。そして、それを目的にしてはいけないような気がしました。

起業するにしても、どこかへ勤めるにしても同じです。生きる上で必要なお金を、自己実現のためにお金を稼ぐべきであって、お金があるだけでは何も生まれません。では、お金って何でしょうか?これから新社会人として旅立つ若い人たちには、ぜひ自分だけの答えを見つけて欲しいですね。ちなみに今のところ私にとってのお金はウハウハするための道具です。

何も学んでねぇ!

では、また。

 

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