絵画から立体作品へ

Satoshi_Hoshi

 

>>ところでこの花(写真)、可愛くて素敵ですね!立体も造るんですか?

これは今はまだ、発表の機会は決まっていないんだけど、中に人が入れるサイズのものを作りたいと思っていて。
いろんなアイデアが浮かぶから、一個一個やってみようとしているところです。

去年、ケルンでの個展のインスタレーションとして、樹脂の花を発注したのね。
パーツを天井から吊るし、ピアノ演奏者を花柄で覆って、絵みたいにしよう!というコンセプト。
ただ、やったことがないことだったから難しくて、色々と計算が必要で、それが苦手で。
その時には思ったものができず、残念な思いが有りました。
だからまずは、自分のコントロールできるものを作る。
これでプレゼンして、出来る人(メカニックなど)に作業してもらおうと。

 

>>自分が作業者である必要は無いですもんね。

規模が大きくなると、全部を一人でするのは無理だしね。
色々と想定していること、こうしたいという仕組みはあるんだけど・・・
あくまで綺麗なもの、何も考えずに見とれるくらい綺麗なものを、一回作ってみたいんです。

 

>>なんだかんだで、人は美しいものには抗えない!

どういう風に捉えるかは、好きずきで良いんだけど。
最近、ハンブルグのアートフェアに行きました。
残念ながら賞は取れなかったけれど、売れると思っていなかった絵が、一枚売れたのね。
「絵の事はよくわからないけど、これが気に入った!」と言って、買って行った。

何を気に入るかは人それぞれで、手に負えない。
だからこそ、元々の俺のやりたいものをやるしかない!という気持ちが、その経験で強くなりました。
絵を描くことで死にはしないし、死ぬまでは好きな事をやっちゃおう!

 

「気に入らないと、財布も心も開かない」絵画の値段とプロモーション

>>なるほど。アートフェアの話がありましたが、作品のマネタイズ方法にも、興味が有ります。

作品の値段を付けるのは、どうしたらいいんだろう?一体これは適正な値段なんだろうか?・・・疑問ですよね。
ギャラリストとも話をしていて、交渉で下げてもいいけど「この絵が好きな人にとっては、値段じゃない」と。
対価としてのお金であって、そのものの価値をどう見るか、ということ。

 

>>対価の内訳は?

掛かった色々なもの、つまり・・・俺の制作時間やマテリアル代、ギャラリーの人件費等はもちろん、
その表現に至るための経験・時間などの”対価”として見合うのかと・・・
ま、今のところ見合ってはいないと思うんだけどね!笑

 

>>少ないぞ!と。笑

じゃあどうすれば見合うのか?と考えるとき、「知っているか知らないか」が大事です。
さくっと買う人は、前もって作品をリサーチして、ネットとかで決めていることが多い。
まずは気に入るかどうかで、気に入らないと、財布も心も開きません。
やりたい事をやって食べて行くのは理想ですが、そのためにはプロモーションもしておかないと。

 

>>それで、沢山のコンペに参加していらっしゃるんですね。

コンペは、多くの人に見てもらって認知度・注目度を挙げるのが目的です。
いざ買おう!となったとき、まず知っている人にコンタクトを取る、という心理もあります。
認知度が上がれば裾野が広がり、裾野が広がる≒山が高くなる(値段も上がる)でしょ。
来月はデッサウとシュトットゥガルト、先日はハンブルグやケルンなどに作品を出し、できるだけ知ってもらおうと。

 

>>営業努力をされているんですね。反応は聞いていますか?

先日のアート・フェアはアーティストばかりが多かったんですが、凄い褒められたのね。
作品だけじゃなく、ポストカードも売れたり。
前にひとり、俺の絵を見て悔しがっている人もいて。
作家さんに嫉妬されたことは、普通に褒められるよりも嬉しかったですね。

 

インスタレーション・アーティスト塩田千春さんの、アシスタント時代

>>逆に星さんが、この人は!と思う芸術家は誰でしょう?

塩田千春さんの作品には、シンパシーを覚えます。
アシスタントをしていたことがあり、一緒に、あるいは代わりに仕事をすることも。
上手く行ったかどうかは自信がないけれども、単純に彼女の作品は作っていて楽しい。

 

>>ヴェネチア・ビエンナーレでは日本代表でしたね。彼女の作品には、圧倒的質量を感じる!

ミニマルな作業をずっとずっと繰り返して、部屋を埋め尽くすじゃない。
ああいう仕事は、いいなと思う。
インスタレーションをイマイチ理解していなかったけれども、塩田さんの作品を通して興味が湧きましたね。
空間を支配してしまう感じ。客が見に行くのではなく、客を取り込む。
あの空間演出は魅力を感じるかな。

 

>>絵画だと、どうでしょうか?

17、8世紀頃の風俗画が好きです。
作家名は覚えていないけれども、印象に残っているのが・・・
森の中、夕陽が沈みかけていて、遠くに家の灯りがうっすら見える。
手前に犬と男がいて、犬は前を先導しつつ後ろを振り向き、男はこっちを見ている。
道に街灯は無く、彼の手にも何も灯りが無く・・・これから薄暗くなっていく瞬間。
その真っ暗な道を歩いて往く、と思うとドキドキする!
昔の生活感がある絵、自分がそこに行ったらどうなるかな?と妄想できる、時代が違う絵は楽しく観ています。

 

>>物語を感じますね。

だから自分でもそういう絵も描いているのかな。
「holes(穴)」シリーズは、観る人にストーリーを感じてもらいやすい。

 

Satoshi_Hoshi-5

 

「まだ見ぬものを見せていかなければ、導かなければ」創作活動を続ける理由

>>アートは、必ずしも生きるための必需品ではない。それでも、星さんが創作を続ける理由は何でしょう?

それは若い頃からずっと考えていて、二十歳の時、同級生にプレゼンしたことがありました。

生命体の話をしたの。
地球に存在する生命体、植物や人間、動物、プランクトン・・・は、総数が決まっていると。
その魂のバランスによって、現在に至っていて。

輪廻転生をベースに考えたとき、人間の中にも何ターン目かの違いがある。
1回目の人間は、即物的・動物的というか、生きていくことに必死。
2回目に人間になる時には、もっと知恵を使ったり、理想で生きたり、人のためにできることをする。
3ターン目になると、”無いもの”つまり抽象的概念を中心に、生きていくんじゃないかと思っていて。
芸術をするような人間は、人類がまだ見ぬものを見せていかなきゃ、導かなきゃいけないんじゃないかと。

作品を見た人は、無駄だと、あるいは有意義と感じるかも知れないけれど、それは意見として置いておいて。
俺自身は、「頭に浮かぶものは、作らなきゃいけない」と考えています。

 

>>他の誰も作ってくれない。

俺の描きたい絵が、既に世の中に存在するのなら、描かなくて良い。
ただ、まだ見た事がないから描くしかなくて。
立体作品も、頭の中に浮かんじゃったから、作らなきゃいけなくて。
そうしないならば、俺が生きている価値はない、と思っています。

 
星 智ホームページ
http://satoshihoshi.wix.com/2015

 

 

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Grace Okamoto
プラント設計エンジニアとして勤務しつつ、ネイチャーフォトグラファーに師事。 退社後、バックパックを担いで単身世界一周。訪れた国はのべ60ヶ国以上。 現在はベルリンを拠点に、ファッションフォトグラファーに師事、かつフリーランス・フォトライターとして活動中。 好きなこと:写真/登山/読書/ボルダリング/ダイビング/旅行/ありとあらゆるジャンルの音楽/茶道/カフェめぐり・・・ https://www.flickr.com/photos/megumi-grace-okamoto/ Twitter::@gracefotoberlin