二つのアルバム誕生秘話

 

-中込さんは2012年、2013年と立て続けにアルバムを出してますよね長い沈黙を一気に破る感じで。なぜ、そのタイミングで出そうと思ったんですか。

 

確かあれはですね、メジャーバンド「赤い公園」さんの復活ライブで前座として出させていただいたのが契機だったと思います。渋谷クラブクアトロという箱でやらせていただきました。

 

-えぇ!?すごいですね…。

 

お客さん800人くらいの前で歌ったんですけど、私目当ての人は3人だったというね。

 

-(爆笑)

 

滅茶苦茶アウェイでしたよ。でも、この時は波が来てるな、って感じがして今出さなくてどうする!という勢いでアルバムを出しました。

 

-確かに今しかない、ってタイミングですね。ちなみにライブは勝手に出たわけじゃないですよね?

 

勝手に出てないです、勝手に出てないです(笑)そうそう出演前にちょっとしたエピソードがあって…実は一回お誘いを断っちゃたんですよ(笑)

 

-えぇ!?

 

赤い公園さんって、事務所に所属しているすごいメジャーなバンドなんですけど当時僕知らなくて。お誘いが平日だったんで、断っちゃったんですよね。仕事あるから無理でしょ、って思って。

 

-気持ちはわかります。

 

そしたら、なんか大物感が出てしまい次に誘ってもらった時はマネージャーの方から直々に電話でオファーをもらっちゃって。

 

-理由を知らなかったとはいえ、地方のアーティストがメジャーバンドからの誘いを断るって相当事件ですよね。

 

おかげでハードル上がっちゃいましたよ。プレッシャー半端なかったです。ただラッキーだったのは、次に誘ってもらえたのが「赤い公園」さんの復活ライブという大きいイベントだったので、本当に多くの人に見てもらうことができました。身の丈に合わないとも言えるんですけど。

 

-謙虚すぎる。それにしても平日はサラリーマンの生活だと、やっぱりライブや曲作りの時間を取るのが難しそうですね。

 

色々、色々ありまして。事情がね。

 

-大人の世界ですね。本当、忙しいのに取材も受けてくださって恐縮です。

 

もう全然、そんな気にしないでください。全然。

 

-言おう言おうと思ってたんですが、中込さんって本当に謙虚ですよね。噂によると本当はシャイとか何とか。

 

そうなんです、そうなんですよ!前に出れないというか、自信が持てないんです。ライブって普通告知しますよね。でもすごいマイナス思考だから「調子悪かったらどうしよう」とか考えて、宣伝もあまり出来ないんです。自分から呼びかけるのが本当に無理なんで、強制的に誰かやってくれないかっていう願望があります。
-(爆笑)どんだけ受け身なんですか。

 

営業が苦手なせいで、お客さんも中々増えない。

 

 

帰宅後に調べた「赤い公園」がめちゃくちゃカッコイイ。

 

中込の音楽の今昔

 

-もう長いこと音楽活動をしてらっしゃる中込さんですが、私生活の変化や年齢とともに音楽に対する気持ちに変化はあるんですか。充電期間を設けてモチベーションを保つようになったとか。

 

いや、音楽に対する思いはあんまり変わってなくて、むしろ出来ない時間が増えて思いが募る一方です。ただ学生時代は時間があって好きなだけ打ち込めたのに対して、今は時間を見つけて向き合うようになったので「質」とか「効率」を考えるようになりました。そうじゃないと、出来ない。

 

-新曲とか全く出てこなかった時期があったから、引退したのかなって心配したこともあったんですけど、単に忙しかったからだけなんですね。

 

ただ一時期、月に3回ライブやっていたことがあって…その時は一回ライブ活動から身を引きました。なんのためにライブやってるんだろう、ってわかんなくなったんで。家ではちょくちょく作ってたんですけどね。それと出張とかの関係で、機材が全く手元にない状態だった時は、物理的に曲が作れなかったこともあって本当に離れてました。

 

-生活あってのこととはいえ、世知辛いですね。心中お察しします。

 

赤い公園さんとのライブで知っていただいた方も、ちょうど忙しい時期と重なって次に繋がらなかったのは残念でした。仕事へ行く特急に揺られながら肩を落としていたのを、今でも覚えています。

 

-そんな中、中込さんがもがきながらひねり出した「これだ!」って曲はなんですか?

 

まさに今日歌った新曲「歌詞が全然出てこない」ですね。この苦しみをぶつけました。歌詞の中でも「平日休めないohサラリーマン」って歌ってるんですが、本当に言葉のとおりです。今の状況をバッチリ表せられてるかなぁって。

 

-ちょっと意外です。あんな独創的な歌詞を生み出した人の口から歌詞が浮かばないって。

 

いや、ぜんぜん出てこないんです。

 

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秀逸な歌詞の「パソコンを振り回せ」も苦渋の産物?

 

 

転機となったのはリーブ21

 

-話は変わりますが、ホームページに替え歌が載っていますよね。音楽の方向性が決まったきっかけとなったとか、っていう。

 

リーブ21ですか。確かにあれで音楽活動の方向が変わりました。ある日リーブ21のCMで流れている曲を聞いていたら「これってAメロだよな?サビどうなってるんだ」ってところから始まって、勝手に作詞作曲したんです。

 

-また勝手に(笑)

 

勝手に。で、それをやったらライブでやったら思いの外ウケちゃったんですよ。

 

-それまで真面目な曲やっていたんですよね。すごい勇気というか、英断というか。

 

あの時は何かに取り憑かれてました。そうとしか言いようがない。でも結局これで良かったのかどうか、わかんないですよ。そのせいで、もう戻れないです。今日も真面目な曲やりましたけど「それ面白くないね」って空気になるじゃないですか。

 

-(爆笑)そんなことないですよ。

 

いや、もう戻れないです。

 

-じゃあ本当は真面目な曲を沢山やりたいのに!っていうジレンマはあるんでしょうか。いずれ脱却する思いは?

 

もうね、こっちでいきます!やっぱりね、一番大事なことのは他の人がやってないってこと。みんながやりたくないようなことをやらないと意味なんです。これが自分の役割だと思ってます。

 

-それでライブにお客さんが来てくれればオールOK?

 

いや、最悪誰も来てくれなくていいです。お客さんいなくても曲だけ作っていられれば、それでいいんです。

 

-承認欲求とか自己主張が、ないんですね。

 

ライブも本当は作った曲を発表する場にしたいんです。曲作る時間を潰してライブに出るのは違うかな、と。曲作れないのは辛いものがあります。

 

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このアルバムジャケットから想像できない曲作りへの想い入れ。

 

 

迷い続ける男、中込

 

-音楽活動始めて何年になるんですか。

 

このスタイルになってからだと…何年だろう。もう10年以上やってます。未だに、これで合ってんのか全然わかんない。気づいたらここまで来ちゃいましたね。

 

-でも中込さんの出番になった時、お客さんの数めちゃくちゃ増えてましたよ!やっぱり中込さんにとって一番いいスタイルなんですよ。

 

そう思うじゃないですか。みなさん他のバンドのお客さんですから。ついでに、ついでに見ていこうっていう感じなんですよ。結局ね、わざわざは来ない。やるんだったら、ついでに見ようっていう集まりです。これ自分でもわかってますよ。

 

-(爆笑)でも若干、宣伝しない中込さんも悪いですよね。

 

まぁまぁまぁまぁ(笑)自分も悪いです。いや、お客さんも誰も悪くない。

 

-でも僕は中込さんの曲から勇気もらってますよ。仕事で納得いかないこととかあっても、中込さんの歌を聴くと元気になります。

 

ああ、ありがとうございます!そう言ってもらえると、音楽やってる意味があります。でも仕事は納得いかないこと、嫌なことするものですから、ある程度妥協しないと。

 

-そこはドライなんですね(笑)じゃあもし、音楽で食って行くってなったら我慢して作りたくない曲も作る、っていう風に考えているんですか。

 

いやもう、も〜う難しいかなぁと。それに自分のスタイルは商業向きじゃないんで、趣味でやっていきたいです。自分の好きな曲を作りたいんで、やりたいことにはお金を出す。お金をもらう時はやりたくないことをやる。これです。

 

-名言いただきました!というわけで、そろそろお時間なので最後に中込さんの今年の目標なんかを教えてもらってもいいですか。

 

今年ねぇ…難しいなぁ。とりあえず今日やった「歌詞が全然出てこない」は目玉曲として打ち出していきます。他にも新曲ができ始めているんで、売り物になるようにレコーディングもしたいです。

 

-おお!是非またiTunes StoreやAmazonで販売してください!買います。

 

ハァイ、頑張ります。

 

-声ちっさ!宣伝も頑張ってくださいね!本日はありがとうございました〜。

 

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全力で音楽にぶつかる姿勢が、聞く人を惹きつける。

 

 

 

中込さんに会ってみて感じたのは、とにかく真面目。本当に真面目な方です。前情報通りでしたが、益々ファンになりましたね。妙に後ろ向きなところもあって、本当不思議な人だなぁと思います。インタビュー中、私はずっと笑いっぱなしで文字起こし中もニヤけてしまいました。

 

そして音楽のこととなると、並々ならぬプライドを覗かせる中込さん。自分の音楽観を大切にされていたのが印象的でした。これからもガンガン曲を発表してもらい、もっと世の中に「中込ブランド」を届けて欲しいですね。

 

さて、中込さんの魅力をさらに探求するべく今回はライブにもお邪魔させていただきました。その時の様子をレポートしたので、こちらも御覧ください。どうぞ!