星野道夫の写真集:カメラマンになろうと思った切っ掛け

 

高校生の頃はずっとテニスをやっていて、コーチや実業団選手、インストラクターになる人が多いくらい強い学校だったんです。
でもやり過ぎちゃって、選手とか身体を動かして生きて行くのはちょっとやだな、と。
何もしないでお金が大量に稼げる仕事はないのかな??と思っていました。

ある日家に帰ったら、母が写真集を一冊買って来ていて、それが星野道夫さんのアラスカの写真集でした。
星野さんの写真に感動したという訳ではなく、ただ動物を撮っている一人のカメラマンのおじさんが居るな、と思って。
その頃はまだ写真もやってないし、興味も無かったし。

 

ただ「写真集」という物体へのファースト・コンタクトが、星野道夫さんの作品だったと。

見たことがない動物を撮っているおじさんがいて、背表紙を見たら顔写真が載っていて。
おじさんの写真は、すごく汚い恰好と髪型で、真っ黒な顔して、笑顔だったのね。
「こんなに簡単にお金を稼げるヤツが居るんだ」と思った。
そこで感動した、とかではなく「この汚い恰好をしているおじさんが、本を出してきっと何千万も稼ぎ出しているんだろう」ってイメージになった。

 

_DSC0110

 

高校生ならでは・・・笑

大きな勘違いなんだけど、それが僕の中ですごく大きなモチベーションになりました。
「汚い恰好してたって、スーツ着て時計してネクタイしなくたって、お金って稼げるんじゃないかな」って最初に思って、色々考えた結果「写真」だった。
実家が写真館を経営していて、家に沢山カメラがあるという、最初に必要なお金が掛からないというアドバンテージもありました。

それが自分の中でカメラマンになろう!と思った最初の切っ掛けで、星野さんとのファースト・コンタクトだった。
そこから、星野さんの行った場所に行ってみようとか、見ていた・考えていてたことってどういうことなのかな、とトレースしながらアラスカに通っていました。
彼のことを良く言う人と悪く言う人がいるのは、アラスカ独自の観点だったかな。

 

彼は良く知られていました?

知られていました。
2つのサイドが有って「すごく道夫は良かった、彼はレジェンドだ」という人がいれば、逆に「あんな無知で馬鹿なヤツ、だから熊に食われるんだ」という人も居て。
(※星野道夫氏は、ヒグマに喰い荒らされて亡くなっている)
見方としてはどちらも正しいんだろうけど、星野さんへの、現地の人からのリアルな感想を聞けたというのは、自分の中では意味がありました。

 

デザイン会社での仕事と、プライベート・アートワーク

 

就職後、日本ではどんな仕事を・・・?

デザイン・プロダクションで、10年間働いていました。
かなり規模が大きく面白い制作会社で、全ての人材が揃っていてました。
プロデューサー、デザイナー、コピーライター、クリエイティブ・ディレクター、カメラマン、フォト・ディレクター、アシスタント、CGクリエイター、3Dプリントのテクニシャン、動画マン、特殊パッケージデザイン・・・色々な人が居る会社で。
最初の1年はアシスタントをしつつ、すぐカメラマンにさせてもらってずっと働いていました。

 

同時に、ご自分のアートワークも撮られていたんですよね。本質的に会社の仕事とは違うと思うのですが、インスピレーションやパッションはどこから出て来ましたか?

作品によっても違うんですけど、僕にとって作品は、フラストレーションの発散やプライベートだからこれをやる、という感覚で作っているわけでは全くなくて。

 

では、どういう感覚で?

「未来のプロジェクトの参考資料」という感じが少しあって。
普段の広告・商業写真のビジネスは、支配する人が居て、その人に確認を取りつつお客さんの欲しいものを聞いて、目標に向かって最短距離の仕事をする、というのが基本的なワークフローです。
その一方で、僕がいつも心掛けているのが「提案できるアイデアを、常に持っていないといけない」ということ。
僕らの仕事は、ただ言われたことをやるだけ、という種類のものではない。

 

「熱量は、人のクリエティビティにとても関わってくる」広告という仕事

 

面白いと思う広告ってちょっとアンバランスだったり、ちょっとエッセンスが効いている。面白くないCMは何もないでしょ?

 

印象に残らないですね。

ただ商品を伝えているだけだとね。
凝ることが全てではないけれども、その仕事に対してどれだけ熱量を込められるか?というのがポイント。
「熱量は、人のクリエティビティにとても関わってくる」と思っているんですよ。僕らの業界だと特に。
瞬間だけでも商品を愛し、モデルを愛さないと。

撮影の前段階でアイデアを出すんだけど、単純に雑誌等の資料を集めて出すだけだと、ちょっとオリジナリティに欠ける。
その時に「僕って普段こういう人間で、こうやってみても面白いですよね」と見せる参考資料が、プライベートのアートワークです。

 

なるほど、そのための作品なんですね。

同時に、一番素直に自分の写真を撮れているので。それがやっぱりカメラマンにとって一番理想なんだと思うんです。
お客さんやデザイナーといったクリエイターの人々は、仕事の単純なアーカイブだけを見たいのではないので、+αを見せるためには何が必要なのかな?と。

普通はクライアントやアート・ディレクターのやりたいことに沿って行く、というのが写真ビジネスのやり方です。
フォトグラファーは最終的に(製品に)化粧をする仕事で、ビジュアライズを世に出す一番最後の仕事、どうしてもボトムの立ち位置になってしまうのね。
でも底がもっと力を出して行けば、もしかしたら自分のスタイルに対して、上の人たちも寄って来れるんじゃないかな?
「大さんの写真で、こんな広告が作りたいです」となれば理想で、お客さんの方から自分のアートワークに寄って来てくれる。
お金をもらって自分のやりたいことを出来るならば、こんなに美しいことは無い!と思っています。全員ハッピーで、全員Win-Winで。

 

さらに、より良いものも出来る、と。

そう。そのための作品を常に作り続け、脳みそを常にリフレッシュして、稼働させておく。
いつもクリエイティブで居ろ、という訳ではなく、人と話す時につまらない人間にならないように務めています。
なるべく人に自分の持っている情報を伝えられるようにしたいし、それをビジュアライズ出来る仕事をしているし、機材も有るから、アートワークにして作れば良いと。

(インタビュー後編へ続く)

 

青木大オフィシャルホームページ

http://hiroshiaokiphotography.com

A&O Artists and Organisation(エージェント)
http://aando-berlin.com/fotografen/hiroshi-aoki.html
Under The Mango Tree (ギャラリー)
http://www.utmt.net

There is a place called Elsewhere; Within us
Between dreams and documentation
Asian Art Today

https://www.facebook.com/events/1664969793743365/