ビジネスとしての広告写真も撮りつつ、精力的に個人の作品を撮り続けている写真家・青木大さん。
真っ白なギャラリーに展示された、色彩豊かな作品 ”√BIT” シリーズ。彼にとってアートワークとは「未来のプロジェクトの参考資料」であると言います。
皆スマホを持っている時代に、どうやって写真を撮り続けて行くのか。真摯に写真と、お客さんと向き合う、青木大さんのお話を伺いました。

(インタビュー前編はこちら)

 

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プロだから、消費者のことを考えて作品を作る

 

プライベートのアートワーク、そういう仕事としての背景があったんですね!もっと個人的な感じだと思ってました・・・

もちろん個人的な感じの作品もあるんだけど、自分の為だけで良い、というものは無価値と一緒だと思うんです。
「人がお金を出してこれを買うか?買わないか?」というのが、僕のスタート地点。
「俺はコレが好きだから、コレを人に見せたいだけなんだよ!」というエネルギーは、綺麗ではない。
広告業界で働いていたからかもしれないけど、そういうエネルギーは自己中心的に見えてしまいます。
ちゃんとお客さんに「こういうモノを見て下さい」という姿を、ある程度分かりやすくしてあげないと。

 

独りよがりになってしまう、と。

緻密な計算をしろという訳ではなく、単純にアーティストとしても広告写真家としてもプロなんだから、ただ吐き出しているだけの作品は違うなと思いますね。
値段の付くものを作らないと。

 

皆カメラを持っている時代に、写真を買ってくれる能動的なお客さんに対して、真摯に向き合う

 

特にアートとしての作品はすごく真剣に考えないと。広告よりも、見えないものが多いんです。

 

見えないものとは・・・

例えば、具体的でないもの。お客さんが欲しているものが、具体的ではない。
どういうお客さんを狙うのか、お金の出所、作品を買った人の将来、全てが見えない。

単純に展示して、欲しい人が買って行く。アーティストも消費者もお互いに見えないんだけど、ただ一枚の写真で繋がっているという。
素敵な様でいて、ものすごく現実的な話だと思います。

 

広告よりも、ある意味シビアでしょうか?

シビアというか、広告よりも真摯に向き合わないといけない業種だと思っていて。
日本だと、広告カメラマンとか広告プロデューサーって、ちょっとチャラいイメージ有るでしょ?

 

代理店の方とかは・・・笑

実際僕も、広告の仕事しているときはチャラいんです。
でも、アーティストはチャラチャラしてらんないでしょ?そもそも皆やっていることが、チャラチャラしてるんだから。
パシャっと撮って「写真一枚、お金ください」って言ってる訳だから、むしろふざけてるでしょ?

 

端から見れば。

フォトグラファーからすれば、写真はいかに難しいものかということや、表現することはそんな簡単じゃないと分かっている。
でもお客さんからして見れば、今はカメラを持っていない人なんて居なくて、スマホで格好いい写真が撮れるんです。
そんな時代に「写真を買おう」と能動的になってくれているお客さんに対して、どれだけ真摯に「本当の僕らのアートとはこういうものです。写真とはもっと深いものなんです」ということを、どうやって伝えて行けるか?と。
昔とは全然違う写真の時代が来ていると感じます。

 

これからの「写真」は、どうなって行くと思いますか?

分からないですね。少なくとも新しいものを作らないと、先が無いと思う。
僕も今、写真の新しい見せ方・捉え方でやろうとしていることはあります。

フィルムとかは僕も好きだけど、仕事で「フィルムっぽく」となるのは、ノスタルジックに「あの頃は良かった」って言っているだけで、決して進歩的な表現ではないんです。
今の時代って、ちょっと逆行を望んでいるようで、決して逆行を望んでいる訳ではない。
過去の方法に憧れる部分、足りない感じが素敵・・・と言っていることは分かるけど、もっと面白い写真ができたら、そっちに飛びつくでしょ?
現在は代用品としてその表現を使っているだけで、でも本当に欲しているものは違う。
もっと新しく、もっと斬新なものです。

「より面白い、より斬新な、しかしやり過ぎではないコンテンポラリーさを持っている、という塩梅の時代になっている」
ヨーロッパの写真を見るうちに、最近はそう感じるようになりました。
写真の新しい表現を、写真で生み出さないと、写真の未来は無いと、自分の中で思っていますね。

 

ヨーロピアンとアジアンの、繊細さの違い

 

ベルリンに来て、日本と感覚の違いを感じますか?

広告写真について言えば、日本での仕事と同じことをしていないので比べられないけれども・・・
全部が違うでしょうね、コンプライアンスから何から。

ベルリンは面白くて、ヨーロッパの一国の首都でありながら、発展途上である。
そういう街は世界でも珍しいと思いますし、多民族でもある。

ただ、色々な所で仕事をしたいと言ったけれども、一つの国のメソッドだけを勉強して、この国だけで生きるというのは、僕にとってあまり意味が有りません。
それは日本で生活しているのとそう変わりないよね。言葉が不自由なだけで。
ドイツの面白いと思う技術やメソッド、ワークフローを日本にも取り入れ、ベルリンから逆輸入された選手として紹介されていきたいし、
逆にベルリンに対しては日本からの輸入選手として登録したいんです。

 

こちらで、日本人らしさというのは評価されたりもしましたか?

うーん、あまり関係無いと思う。日本人だから、というのは無いかもしれないですね。
ただヨーロピアンの言う「日本人のオリエンタルな写真だね」「ヨーロッパっぽいね」という違いは分かってきました。

それは塩梅というか、繊細さの違い。
ヨーロッパにはヨーロッパの、アジアにはアジアの繊細さがあり、その種類が違う。
僕に頼まれる時は、アジアっぽい繊細さの写真を求められているんだろうと思うから、そこからスタートします。
で、もっとパンチが欲しい・・・なんて言う風に要求されて、ヨーロッパっぽさもエッセンスとして必要なんだな、と少しずつクライアントへ寄せて行く。

 

種類が違う繊細さ、ちょっと分かる気もします。・・・ところで、休みの日は何してるんですか?

映画見たり、酒を飲んで、ごくごく普通ですよ。

 

ベルリンには、安くて美味しいバーも多いですしね!

うーん、ぐちゃぐちゃになってるかな、飲むときは徹底的に飲むし。
日本でもベルリンでも、まともな生活はしてないかも!

 

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ギャラリーUnder The Mango Treeでのグループ展

 

今回の展示”There is a place called Elsewhere; Within us”は、アジア人のグループ展なんですね。

日本、インド、中国、マレーシアからの作品です。
ドイツ人の作家も参加していますが、日本の墨絵の手法を使った作品を展示していますね。

 

どうやってコンタクトを取って、ギャラリーを見つけたんでしょう?

ギャラリー・オーナーがテキスタイル&グラフィック・デザイナーで。
ベルリンに来てまず最初に、フリーのデザイナーにどんどん当たって仕事を聞いて行こうと思ったんです。それで知り合ったうちの一人。
普段クリエイティブ・ディレクターやデザイナーに会う時って、アートワークを持って行かないんです。

 

大さんのアートブック、大きくて重いから。

でも彼女は持ってこいと言ったので持って行ったら、全然仕事の話にならず、アートワークの話になって。
今回展示した”√BIT” っていう作品が、すごく気に入ったと。しばらくしていきなり連絡がきて、展示しましょう、ということになりました。

 

”√BIT” は、各都市で撮ってこられたんですか?(コンセプトなどは下記参照 http://hiroshiaoki.com/work/b/explanation.html

去年はノルウェーで作ったけど、それぞれの都市・国で撮れれば良いなと思ってます。
今回の展示はUSAのLAの作品で。

 

お客さんの反応は?

悪くないと聞いています。
他の作品が比較的クラシックなスタイルだから、ちょっと浮いてるけど・・・
そこまでコンテンポラリーな表現でもないので、too muchではないかな。若手として紹介してもらってる感じですね。

「写真を撮り続けることが、社会に対しての義務」

 

では最後に、大さんはどのように「写真」で世界と関わって行きたいですか?

まず「写真を撮り続けるということがいかに難しいか」ということを僕は日々考えていて。
単純にアマチュアと一緒で撮ることではなく、プロとして人からお金を頂いて写真を撮り続ける、ということに意義が有る。
それと同時に、ちゃんと自分の写真を撮り続けることも非常に重要です。

 

自分の写真。

自分の写真とは・・・普段自分が見て面白い、楽しいとか美しいと思ったものを常に被写体として捉える、義務が有ると思っています。
僕の持論ですけど、残らなくていい写真など一つもない。
百年前の江戸の写真って一枚でもすごく面白いでしょ。時間が価値を上げてくれる。
今は「写真」が消費者の中でとてもライトになってきているので、自分たちが撮り続けることがそこまで必要か、確かにブレるけれども、僕は撮り続けて行きたいですね。

なおかつプロとしてお金を貰う以上、お客さんが驚くようなもの、見たことが無いような「写真」を展開していかないと。
今は表現がすごく競争的で、出尽くしていると言ってもいい。
技術一辺倒で攻められなくなった時代になっているから難しいけれど、その厳しい世界の中でもなるべく面白いものを作り続けて行きたいなと。

僕にとってはシンプルに「写真を撮り続ける」ということが課題です。
同じ写真学科を出た知り合いでも、プロとして写真を撮り続けていて、かつプライベートなアートワークも撮って、ちゃんと経済活動を出来ている数はとても少なくて。
特にこうして知らない街で、プロのレベルまで持って行くのはハードルが高い。

 

「写真を撮り続ける」こと。

・・・簡単な行為なんですけど、実際やってみようとすると難しいので。何でもそうだと思います。
続けることが、社会に対しての自分が選んだ義務だと思うし、
続けることが、プロとしての自分のアイデンティティを保つ上での唯一の方法しかないから。

 

 

青木大オフィシャルホームページ

http://hiroshiaokiphotography.com

A&O Artists and Organisation(エージェント)
http://aando-berlin.com/fotografen/hiroshi-aoki.html
Under The Mango Tree (ギャラリー)
http://www.utmt.net

There is a place called Elsewhere; Within us
Between dreams and documentation
Asian Art Today

https://www.facebook.com/events/1664969793743365/