みなさんは映像授業というものを受けたことがありますか。
映像授業は「個々人に合わせたカリキュラムが組める」など、さまざまなメリットがあるため、以前より広く注目されていました。
Youtubeがあたりまえのものとなり、多くの場面で動画が登場するようになった近年。スマホで動画を見るのは当たり前。そんな時代の流れもあってか、近年映像授業はさらに盛り上がりを見せています。
例えば、林修先生でも有名な『東進ハイスクール』。大教室で授業を行う旧来の予備校の常識を打ち破り、区切られたブースで録画された授業を見るという画期的な授業スタイルを確立しました。
https://www.youtube.com/watch?v=gYq8q_fYd7I
記憶に新しいもので言えば、アルプスの少女ハイジのパロディCMで有名な『家庭教師のトライ』。スマホで見れる映像授業のサービスを開始しました。あのスマホを振りながら踊るテレビCMです。
https://www.youtube.com/watch?v=GMRWggB-s-k
このように今や映像授業は、予備校業界での新たなスタンダードとなりつつあるのです。
今回は、映像授業の学校教育での可能性、そして徐々に浸透しつつある「反転授業」について考えていきます。
映像授業の学校教育での可能性
これだけ予備校取り入れられている映像授業だったら、学校教育で取り入れてみてもいいのではないか?という意見もあがるかもしれません。
教育分野にもednityやedmodeなどのSNSも登場し、対面でなくても質問できる環境も整いつつあります。登校することなく、映像授業で勉強することも技術的には十分に可能です。
しかし、そこには乗り越えなければいけない大きなハードルが存在しています。それは、「競い合う雰囲気の欠如」です。
学校や予備校では昔から、多くの場面で「切磋琢磨」することで、生徒たちの成長を促してきました。同じ教室の中で、多くの友人という名のライバルに囲まれながら勉強をする。目に見える相手だからこそ、負けたくないという気持ちや、追いつきたいという気持ちが生まれます。周りの学んでいる姿を見ることで、そこから自分の学びに生かすこともできます。このように、「知識だけでない学び」というものが得られるのが、教室での授業でした。
映像授業でも試験などで順位をつけることで、生徒たちを競い合わせることは可能です。しかし全く知らない人々と競い合わせても、競い合う相手は見えず、効果はあまり見込めません。
このような理由もあって、映像だけで授業を完結させることは大きな広がりを見せていないのです。
話題になりつつある「反転授業」
一方で、映像を使った新しい授業形態が注目されつつあります。
「反転授業」と呼ばれるものです。(掲載時、脚注的に関連リンクをいくつかいれさせていただくと思います。)これは、予め動画で各自の予習を行い、その後に実際の教室で質問や演習を行う授業形態です。授業を教室で行い演習を個人で行うスタイルと反対であるため、このように呼ばれています。欧米ではすでに新しい授業形態として受け入れられ始め、日本でも実験として一部の教育機関で取り入れられています。
この「反転授業」の最大の利点は、映像授業のメリットが生かされるとともに、映像だけで授業をが完結されないため、「競い合う雰囲気」が失われないことです。
予習の段階では、個々人の進度に合わせられるため、理解のむらがありません。その一方で、演習の段階では教室で行うため、競い合う雰囲気が生まれます。
全員が同じ水準で理解を深めてから、演習でさらに力を伸ばす。このことで、勉強へ劣等感を感じる生徒が減るのではないかと言われています。
聞いてみただけでも、「なんかちょっと良さそうだ」と思って来ますよね。しかしこれはなんとなくではなくて、実際に成果も上がっているようです。
小学校で実施した「反転授業」後のアンケートの統計です。
http://blog.cloudteachers.jp/elementary_school_reverse_classroom/
この調査によると、「反転授業」の家庭学習が授業に役立つと回答した人が全体の94.1パーセントにのぼるとしています。これは、「反転授業」を熟知した先生が実施した授業であり、例外的ではありますが、目に見える成果が上がっていることは事実のようです。
「反転授業」のこれから
これだけの成果をあげている「反転授業」ですが、これから順調に広がっていくのでしょうか?その鍵は、家庭間の「デジタル格差」を克服できるかにあります。
インターネットの普及率は爆発的に伸び、多くの家庭でインターネット環境が整えられつつあります。また、多くの家庭はデジタルデバイスを複数所有しています。しかしそれでも、100パーセントに到達しているわけではありません。
学校教育で「反転授業」を取り入れることになれば、全員があらかじめ自宅で動画を見て来る必要があります。しかし、インターネット環境がなかったり、デジタルデバイスを所有していなかったりする家庭では、動画による予習が難しくなってしまうのです。「教育格差」緩和の「反転授業」が、新たな格差を生んでしまう。皮肉な話ですね。
「反転授業」を広く取り入れるためには、全員が同じ形で受講できるだけの設備が不可欠です。この懸念ハードルをクリアして初めて、多くの人々に受け入れられる教育の形となるのではないでしょうか。
「反転授業」への期待は年々高まっています。「反転授業」のための動画サービスも増えています。まだ主流ではないものの、確実にこの効果というものが認められつつあるのです。
スマホやパソコンで動画を見て授業を予習し、学校では質問・演習を行う。そんな「反転授業」が教育のスタンダードになる日は、そう遠くないのかもしれません。