教育に関して日本と違いを感じる部分

島さん
オーストリアの方が幅が広いかな?何でもありみたいな。例えば高校卒業の資格を取ったとしても、どの学校で取ったかによって、その内容が大きく違う。それにはちょっとびっくりしたな

竹中
それはいいことだと思います?悪いことだと思います?

島さん
その子の得意科目を先生が知ってるというということに関してはいいことなんじゃないかな。いいところを伸ばす教育と言えば、そうかもしれないから。

レッシュさん
日本は、減点式の教育方法という印象を受けることがありますよね。面談に行っても、「ここができない、だからもうちょっとがんばろう」という方式。オーストリアでは、まずできるところを見られます。「これができる、これもできる、これは特に素晴らしい」と。

島さん
オーストリアで、どれだけの親が「うちの子本当に素晴らしい!」って言ってるか(笑)

レッシュさん
そうそうそう

島さん
言うよね!私、今でも言えないよ!私は親だからもちろん思ってるけど、それは絶対評価であって人に言うようなことじゃないし…

レッシュさん
まず褒める。そこが大きな違いかな

竹中
「この子全然できない」と日本式に謙遜するとびっくりされます?

レッシュさん
日本は身内を落としますよね。それが礼儀というか

竹中
主人が、私の両親に結婚の挨拶をした時を思い出しました。父が主人に「料理も家事も何もできない娘ですが。。」って言った時、主人はすごくびっくりしていましたね。「え、してるじゃん!なんで?」と(笑)

レッシュさん
文化だよねえ(笑)

島さん
あと、子供同士のトラブルの学校の対応にカルチャーショックを受けたこともあった!娘が昔、体育の時間に、接触しちゃった子の手の小指の骨を折ってしまったことがあったの

レッシュさん
えー、大変!

島さん
日本的には親も菓子折り持って謝りに行く状況でしょう。先生からも、「今日はこういうことがありました」ってきっと電話かかってきますよね。でも、ナッシング。娘に言われてもうびっくり。それで、すごく信頼している人に電話で「どうしよう」って相談したの。そしたら、その人たちみんな「謝る必要全くない」って言うのよね

レッシュさん
私もそれ聞いた分にはいらないと思うな

島さん
そうなの?やっぱり?私の友達が言うには、その時管理していたのは学校の先生だし、保険で全てカバーできてる範囲なのだから、「むしろこっちがショックを受けているくらいだ」くらい言っていいって、言われたの。だから、骨を折ってしまった子の親とは接触しなかったのだけど、私はその時にめちゃくちゃびっくりした。学校から連絡が無いとか、クラスで話題になってないとか。しかも、「14歳になってうっかり謝りでもしたら、罪に問われたりもするのよ」とか注意されて、本当にびっくり。

竹中
確かに、こちらの人は迂闊に謝るということをしませんね。だから日本人風に大げさに謝ると、とても驚かれることが多いです

学校にいじめはある?

レッシュさん
ある

島さん
あるある

レッシュさん
女の子が多いと聞いたことがある

島さん
最近も、息子の学校にいじめが原因で学校変わってきた女の子いるよ

レッシュさん
子ども同士だけでなく、先生に依怙贔屓されたという話もよく聞く。日本よりもあからさま

島さん
オーストリアでは、大人で教える立場の人たちに「こんなに感情的に叱ってはいけない」みたいなブレーキ存在しないの。先生たち、気持ちよく職場で発散してるよね

竹中
それが嫌だったら、クラスを替えることができると

島さん
その前に、親も文句言いに行くよね

竹中
行くんだ

レッシュさん
行きます、行きます

竹中
それで関係が悪くなって、さらに子供がいじめられるとは考えないんでしょうか

レッシュさん
それはケースバイケースでしょうね

島さん
この親うるさいから、ちょっと触らんとこ、みたいになるかもしれないし。

レッシュさん
まあ人間同士だから、どこでもありますよね。ある程度はうまくやらないと

島さん
子ども同士だと、最近は携帯電話でいじめとがあるみたいね。娘の話によると

竹中
というと?

島さん
ワッツアップって知ってる?日本のラインみたいなSNSツール。クラスの会話で明日の一時間目があるとか無いとか、試験前ここ教えて、とか、そういう連絡をホワッツアップでやりとりしてるみたいなんだけど、そのメンバーから外しちゃうの

竹中
ひえー、それ、どうやって外すんですか?

島さん
多分管理者がいるんだよね。それで、その管理者に気に入られないと外されたりとか。でも、何日かしたらまた戻ったりとか

竹中
ええー

島さん
あと、物を隠したりとかもあるみたいだよ

竹中
そういうクラシックないじめも存在してるんですね

島さん
そうね。それは万国共通みたい。しかもクラス替えがないから、年度末から我慢すればとかがないんだよね

竹中
ずっと続いちゃうのね。。。それで不登校とかになる子もいるのかしら

島さん
不登校は聞いたことないけど、学校変わってくる子はいるよね

レッシュさん
不登校聞いたことないってくらい少ないのかしら。日本だと結構いるけど

竹中
いじめを苦に自殺、とかあまり聞いたことないですね。新聞でも読んだことない

島さん
そういえば、それは聞いたことないね!

親と学校の関わり

島さん
教育熱心な家庭は、子供の試験日程とかまで管理してるよね。宿題とかも見てるし。保護者会に行くと、「宿題多くて大変!」って何故か親が言ってたりする(笑)

竹中
オーストリアでもそういうのあるんですね

島さん
プレッシャーがきつい家庭で育った子は、試験でプリント配られた瞬間わかんなくて泣いちゃったりするみたい!

レッシュさん
日本で言う教育ママって、ここにもいるんですね

島さん
でも、一部の世界だと思う

レッシュさん
うん、一部一部

竹中
オーストリアにもモンスターペアレンツって存在しているのでしょうか?

島さん
うーん・・・。息子が3年生の時、同じのクラスの子が、友達の首を絞めて・・

レッシュさん
!?

竹中
!?

島さん
退学になった子がいたんだけど・・

レッシュさん
ちょっと待って(笑)

島さん
で、もう一人、隣のクラスにナイフを持ち歩いてる子がいて・・

レッシュさん
やめて、もうやめて(笑)

島さん
あはは(笑)。その子がね、ナイフを持ち歩いていたことがわかって、息子のクラスに変わってきたんだ。息子のクラスの先生のほうが経験が豊富だったから。でも、結局その子はずっと問題があるままで。で、問題がある度にお母さんが出てくるのよね。

レッシュさん
問題というのは、暴力とか、そういう問題ですか?

島さん
授業中出て行っちゃうとか。でも「うちの子はこんな天才なのに、何が悪いの?」って、学校に母親が来ちゃうのよ。

竹中
うわあ・・・

島さん
あと、大体年度末になると、各家庭から2ユーロぐらいずつ集めてお花を買って、お世話になった先生にお礼をしよう、なんていうメールが役員さんから回ってくるのね。普通だったら「ありがとう」って払うじゃん。でも、「この先生にお花を上げる必要はない」みたいなメールを全体に返信してくる人が必ず2,3人はいるんだよね。

レッシュさん
えー!

島さん
「うちには、ロンドンにもニューヨークにもアパートを持っていて、息子もしょっちゅう行っているのに英語の成績が3なんてありえません」なんてクラス全体に返信してくる人がいるのよ。先生お気の毒様よね・・

竹中
オーストリアで先生をするのも楽じゃなさそうですね・・

受験戦争は存在する?

島さん
ないよねえ、ある?

レッシュさん
うーん・・

島さん
高校卒業試験の前後に、多少ギスギスしたものがあるけど、、でも、それって自分が受かるかどうかの話で、誰かと比べてどうとかじゃないからなあ

竹中
受験よりも、入った後の方が大変って言いますしね

島さん
オーストリアで大学に行っている人は、将来の職業と関係のあることを勉強してるよね。だから入学した後、自ら進んでものすごく勉強する。

竹中
日本は、大学で専攻したことと全く別の職業に就くことって、結構普通ですもんね。そこに違いがあるのかもしれませんね

島さん
でも遡れば、オーストリアでその方向性を決めるのは10歳だからね。

レッシュさん
ギムナジウムによって勉強することが全然違うからね

竹中
人気のあるギムナジウムというのも存在するのでしょうか。そこに入るため受験などは?

島さん
受験というか、公立のギムナジウムは今までの成績と住んでいる場所で決まるんだよ。8区のギムナジウムだったら、8区に住んでいる人が圧倒的に有利に入れるの

竹中
成績よりも住所を重視?

レッシュさん
そうだね。入れる確率が高い

島さん
あとは、先生との面接。学校によって小テストもあるみたいね

学校外の活動について

竹中
塾は無いと仰っていましたよね

レッシュさん
できない部分の補習 はありますけどね

島さん
あとね、部活も無いんだよ

竹中
無いんですか!では、習い事はどうでしょう?レッシュさんのお子様は習い事をされていますか?

レッシュさん
うちの息子はテニスとサイエンスクラブ。娘はバイオリン、合唱と日本語学校。

竹中
どんな習い事が人気ですか?

島さん
スポーツやってる子は多いかな。でも、英会話とか聞かないね、そういえば!

レッシュさん
確かに英会話習やっている子はいないですね。小学校のバイリンガルクラスに通っている子はいますけど。英語の勉強だったら、夏の英語キャンプに数週間行かせるとか、そういう方法ですかね

島さん
スイミングもないねー

レッシュさん
ない!

竹中
ないんですね!ベビースイミングは大人気なのに

レッシュさん
うん。男の子でメジャーな習い事は、サッカー、柔道、テニス、空手

島さん
アイスホッケーとかもたまにいるよね

レッシュさん
女の子は体操、演劇かな

島さん
楽器やってる子って少ないよね

竹中
意外!

レッシュさん
娘の学年は、3クラスあるんですけど、娘を入れてバイオリンを習ってる子は2人

竹中
少ないですね

島さん
うちの子たちの学年には、誰もいなかったね

レッシュさん
縦笛やギターをやってる子はいるんですけど

島さん
日本だったら、ピアノやってる子すごくたくさんいるじゃない。でも、オーストリアでピアノ弾ける子なんてほとんどいないよね。幼稚園や小学校の先生が弾く楽器も、ピアノじゃなくてギターだし

竹中
日本で音楽の習い事と言えば、まずピアノというイメージがありますけど

レッシュさん
オーストリアではピアノを習ってる子も、4人くらいのグループレッスンだったりするのよ

竹中
え?ピアノってグループで習えるものですか?

レッシュさん
だから、全然弾けるようにならないのよ。本当にちょっと鍵盤を触るだけみたいなレッスン。でもね、市立の音楽教室ってすごく安いんですよ。例えばバイオリンのクラスだったら、楽器を借りて週1回の個人レッスンで、半年200ユーロ(約2万4000円)とか

島さん
半年?今、ひと月かと思ったよ!

レッシュさん
そう。市立はすごく安い。

竹中
レッシュさんのお子さんが通われているのはプライベートの音楽学校ですか?

レッシュさん
そうです。そこは半年で700ユーロですね。

竹中
1か月約14,000円くらいということは、ほぼ日本と同じくらいでしょうか。

レッシュさん
そうかもしれないですね。1週間に1回のレッスンね

竹中
質は先生やお教室によって全然違うというお話しでしたよね

レッシュさん
そう。そして、うちの先生はスズキメソードに傾倒されている方です

竹中
オーストリアでスズキメソードって有名ですよね!日本の本が全部訳されてて

レッシュさん
あと、発表会は年4回

竹中
発表会にお金は?

レッシュさん
かかりません

竹中
そこは嬉しいですね。日本だとかかるところなので。

レッシュさん
何はともあれ、日本と比べたら音楽やってる人は比較にならないほど少ないですよ

島さん
住んでる人は、ウィーンが音楽の都と呼ばれてる事実に気づいてないと思う(笑)オーストリアの学生コンクールなんて聞きにいったら、のりちゃん気絶するよ。肩脱臼するよ

竹中
肩脱臼?なんで?(笑)

島さん
がくってなって!(笑)きら星のような少数のすごい人はすごいんだけどね。そのほかは・・。日本って、中間のレベルにみんなぎゅってかたまってるでしょ

レッシュさん
それは勉強でも同じことが言えますね。      

竹中
オーストリアでは、早期教育なんて存在するんでしょうか

レッシュさん
一部の人はやっているんじゃないですか

島さん
全体的には悪だと思われてるけどね(笑)

レッシュさん
学校の情操教育もあまりないですよね。オーストリアの小学校で鑑賞するのなんて、せいぜい演劇くらいですし

竹中
日本では芸術鑑賞会といって、体育館に生のオーケストラが来ましたけどね

島さん
ウィーンは教育のためにはお金を出すんだよ。でも、オーガナイズするのが先生だからね。美術館に行くにしても、音楽会に行くにしても。

竹中
子供がどんな経験をできるかは、先生によって変わってくるのですね

 

休みの日はどうしてる?

レッシュさん
うちはすごくアウトドアです

島さん
それはレッシュさんの方針?

レッシュさん
いえ、主人の方針で。山登りとか、サイクリングとか。

竹中
こっちの人、自転車好きですよねー

レッシュさん
夏は毎週ドナウ沿いをサイクリング

島さん
冬はアイススケートとかね。ああ、いいな。うちの子はもう遊んでくれなくなっちゃった

レッシュさん
お嬢さん、もうすぐ成人ですもんね

島さん
オーストリア的にはもう成人よー。16歳で飲酒、喫煙、投票できるし18歳で自分でアパート契約できたりするんだもん。

竹中
島さんのご家庭では、子供たちとどのような休日を過ごされていますか?

島さん
子供たちが小学校の時は、国会議事堂のワークショップに参加させてたかな

レッシュさん
うちの自転車との違い(笑)

島さん
楽しかったよ!実際の政治家の話を聞いたりとか、メディアについて勉強したりとか。たくさん参加すると、議会で議長から表彰されるの。あとは、ウィーンシティマラソンを走ったり

レッシュさん
それを全部お一人でされたんですよねー

島さん
当時は労働許可なくて働いてなかったから時間あったんだよ。山もよく行った。自転車も乗ってたよ。あとはドナウ川が凍ってる時期はドナウ川でアイススケート。それに美術館。19歳まで無料なんだよね!

竹中
ウィーンでは休日の日は、文化や自然と触れ合う過ごし方をするのですね。

 

後編はこちらです。