前編はこちらです。

オーストリアで母親であるということ

竹中
ママ友っていらっしゃいます?

レッシュさん
私は日本人のお友達のが多いかな

竹中
公園デビューとか、ママボスとか、そういうのってオーストリアでもあるのかしら

レッシュさん
こっちはすごいさらっとした付き合いだからそういうのはないかな

島さん
無理して付き合わなければいけない関係のようなものはないよ

レッシュさん
日本のような懇親会のようなものも少ないですね

竹中
参加しないと、自分の子がハブられる、とかそういう付き合いはないということですね

レッシュさん
聞いたことないですね

竹中
日本とオーストリアでは「母親」に求められることの違いってあると感じますか?

島さん
日本の幼稚園の説明会で「お母さんの愛情いっぱいのお弁当を作ってあげてください」とか言われたな

レッシュさん
手作りかあー

島さん
私、手作り好きなの。でも、別に愛情があるから好きなんじゃなくて、いや、愛情はあるんだけど、それとは別に手作りがただ好きなの!

竹中
愛情あっても作れない日は作れんわ、と思ってしまう私はもう日本で母親はできなさそうな予感

レッシュさん
できない人はどうするんですかね

島さん
できない人は、手作り風のを作る業者の人がいるんだよ!

竹中
えええ

島さん
そうなの。レッスンバックとかもさ、手作り風のを作ってくれる業者があるんだよ。日本ではそれが要求されるんだよね

竹中
オーストリアではそういうのってないですか

レッシュさん
ないです

島さん
ないです

レッシュさん
いろんなことが自由ですよね。服装自由だし、鞄も自由だし

島さん
一部の私立の学校には制服があるけど、基本はないよね

 

外国で育った子供たち

竹中
子供たちのことを「外人ぽい」と思うことってあります?

島さん
そうね、ずけずけ物を言うときとか

レッシュさん
すごいマイペースなところとか

島さん
あと、先生に対して電話が馴れ馴れしい、というかノリが軽い

レッシュさん
確かに!

島さん
私なんて先生から電話がかかってきたら起立しちゃうくらいの感じなのに、娘なんて、「オッケー、では明日~」とか言っちゃって・・。時代なのかなあ

竹中
オーストリアでは、年下の人が年上の人に敬語を使わないことも多いですよね。私も義理の両親に敬語使っていないんですけど、未だに気持ち悪いです

レッシュさん
本当?私はそれはないな。逆に敬語で話したら失礼じゃない?

竹中
でも日本だったら「お母さま」とか言っちゃって、やっぱり敬語じゃないですか。義理の両親の名前を呼び捨てにしなくちゃいけないのも、気持ち悪いです!

島さん
確かに、日本では義理の父親に向かって「タカシ!」とか言わないもんね(笑)

竹中
話は変わりますが、子供の日本語の勉強が気になってきたりしますか?お二人のお子様の日本語とドイツ語のレベルっていかがですか?

レッシュさん
漢字がかなりヤバいです

竹中
なるほど。。やらせるのって大変ですか?

レッシュさん
やる人はやってるんですけどね

島さん
うちはやっていますよ!

竹中
やらせてる?

島さん
うん、ぬるーくやらせてる。

レッシュさん
うちは、週一で日本語学校通わせているんですけど、小学校3年生くらいで通ってくる子がぐっと少なくなるんですよね

島さん
ハーフの子だと、大きい子でもひらがなすら読めない子がいるよね

レッシュさん
そう

竹中
それは、家でやっていないから?

レッシュさん
日本語学校来てる子ですら、ひらがな書けない子いるんですよ。来ない子はもっとできない

竹中
その分、ドイツ語は問題ないんでしょうけどね

レッシュさん
私は、結構日本語の教育は諦めてるな・・。小学校3年生くらいまではの漢字はやらせようと思うけど・・。やってもすぐ忘れちゃうんですよ。中学校までなんて絶対無理だと思う

島さん
でもオーストリアの学校暇じゃん!うちの子なんて14時くらいから家でダラダラ家で犬と遊んで昼寝してんだよ。座って漢字書きなさい、とまでは言わないけど、いつまでにここまでやっといてって言ったらやる年になったけどなあ

レッシュさん
うちね、ドイツ語も問題・・というほどでもないんだけど、両親ともオーストリア人の子と比べたらやっぱりちょっと遅いような気がするんですよ

島さん
バイリンガルの家庭はどこもそうだよねー

レッシュさん
だから日本語をやらせるくらいなら、ドイツ語やらせたいかな・・

島さん
でも、昼に学校終わるじゃん!めちゃ時間あるよ。子供一人につき毎日5時間ずつ勉強できるよ(笑)

レッシュさん
そうかあー。クッキーとか作ってる場合じゃないか

島さん
あ、でもクッキー作りとかを日本語でやってることも大事なんだろうね

レッシュさん
一応私は家では日本語でしゃべってるんですよ

島さん
返事は日本語で帰ってくる?

レッシュさん
ドイツ語なのよお!「ママー、ママー・・・・Kann ich Deutsch sprechen?(ドイツ語でしゃべってもいい?)」って(笑)

島さん
ドイツ語わかんないふりしとかなくちゃ

レッシュさん
ところが、私の方が日本語が出て来ない時があるんですよね(笑)

島さん
あるよね、それ、残念ながらある(笑)

竹中
ドイツ語で日本語に対応しない言葉が結構あるんですよね・・。ちょっとまた違う質問になるんですけど、子供たちの将来の夢なんか聞いたことがありますか?

レッシュさん
息子は車が大好きなので、レーサーになりたいと。昔は宇宙飛行士と言っていましたけど。

竹中
男の子らしいですねえ

島さん
うちの息子はレーサーなんて一度も言ったことないなあ。本当に好きなんだね。

竹中
ママとしては、なるべく避けてほしい職業ですが・・笑

レッシュさん
あとはスキージャンプ選手とか。見るのも好きなようですね

竹中
それはちょっとオーストリアっぽいですね。

レッシュさん
娘は、クリスマスにくる天使のお願いリストに「世界で一番のバイオリニストになりたい」って書いていた、と学校の先生から報告されました

竹中
素敵!

島さん
うちの息子は昔、サッカーの日本代表になって40歳で引退して、ウィーンフィルのコンサートマスターになるって言っていたけど(笑)今はデザイナーとか言ってるかな。

竹中
かっこいいですね!島さんの娘さんはやっぱりバイオリニストかな?

島さん
どうなんだろう。勉強も好きで、心理学と哲学もとってるみたいだし、まだ本人もわかってないのかもしれないね。まあ、健康でハッピーだったら、それでいいや

 

兵役について

竹中
オーストリアには兵役がありますよね。兵役についてどう思われますか?

島さん
ウィーンやザルツブルグなどの都市部では、半数以上人が兵役ではなく奉仕活動を選ぶのよね

竹中
兵役か奉仕活動って選択できるんですよね。奉仕活動の方が期間が少し長いようですが。奉仕活動の受け入れ先にはどのようなものがあるのでしょう?

島さん
老人ホームとか幼稚園とか、難民キャンプとか

竹中
うちの主人は兵役の方に行ったんですよねえ

レッシュさん
うちの主人も

竹中
衛生兵だったので、脈を測ったり絆創膏貼ったりしてただけのようですが(笑)

レッシュさん
(笑)うちの主人は武器を扱っていたみたいですよ  

竹中
島さんの息子さんは行かなくてもいいんですよね

島さん
彼は日本人だからね。ただ、今から日本に帰って就職する、日本人として日本の社会で生きていく、とか想像がつかないみたいなんだよね。オーストリアにずっといるんだったら、オーストリアのパスポートの方がいいかもって言ってるので、オーストリア国籍を取ることを考えてないわけではないみたい。もしそれだったら、兵役やったほうがいいよね、って言ってるの。

レッシュさん
うちの息子は行くと思いますよ

竹中
それは全然大丈夫?

レッシュさん
大丈夫・・というと?

竹中
何とも思わない?

島さん
国民の義務だからね

レッシュさん
うん。ここに住んでいる限り、普通。

竹中
すごく簡単に受け入れられるんですね。私はちょっと・・やだなー。嫌じゃないですか?

島さん
そうかなあ。理不尽なことを受け入れて、自分が何者でもないというということを受け入れるのも、大人になる過程でしょう

竹中
うちの主人は、実に無駄な時間だったって言ってます(笑)

島さん
爆笑

レッシュさん
爆笑

竹中
絆創膏貼ってただけなんですけど(笑)でも、人間を圧力で押さえつけて小さくさせる教育が良いとは思わないそうですよ

島さん
考え方だねー

レッシュさん
うちの主人は武器を扱ってたみたいですけど、男は行くべきだって言っていますよ、義父も!(笑)

竹中
男は行くべきだ、と。それは何故でしょう?

レッシュさん
集団生活とか、責任感とかなのかしら

竹中
でも、戦争になったらですよ。自分の子供が兵隊にとられるかもしれないってことですよね。不安はないんですか?

島さん
でも、それが参政権を持つってことなんだって。だから、世界的に女性の兵役ってのが議論に上がってきているところなんだよ

竹中
なぜ兵役が参政権と結びつくのでしょう?私たちには兵役がありませんが、参政権はありますよね

島さん
国を守った人しか発言権がない、っていう考え方だってあるんだよ。歴史的に見たら、そうやって参政権を勝ち取ってきた

竹中
うーん。私は、まだしっくりきませんけど・・

島さん
日本人だからね

竹中
うん。未だに女性に車運転する権利が無い国とか、教育受ける権利がない国とかあるじゃないですか。兵役してないと参政権が無いっていうのは、私にとってそれに近い感じです。

レッシュさん
いやー。やっぱりそこまで考えられないよ!もちろん嫌ですよ。戦争になっちゃったら

竹中
想像もしたくないです。日本人のまま40歳くらいになって、それからオーストリアに国籍を替えるのならば、兵役は免れますよね

島さん
そうなんだと思う。でも、もしもオーストリア人になるんだったら、兵役やった方がいいね、って私は思うんだ。

レッシュさん
島さんの息子さんは、オーストリア国籍に変わりたい場合、もういつでも変えられる状態なの?

島さん
うん。何も問題ないと思うよ。でもね、空港で働いてると実感するの。毎月のように査証の条件って変わったりするんだよね。このパスポートではこの国入っていいとか、いけないとかね。トランジットだけでも査証が必要だったりとか。だから、国籍が同じじゃないと運命が変わると思うんだよね。同じところに行くにも、一人はビザを申請しなくちゃいけないとかあるからさ

竹中
と、いうことは息子さんが国籍を替えたら、家族全員の国籍を変更したいということでしょうか?

島さん
そこまではまだわからないけど・・やっぱり寂しいかな

レッシュさん
国籍変更は相当勇気いるよね

島さん
もしも子供がオーストリアの人と結婚するんだったら替えればいいと思うけど

竹中
レッシュさんは日本人ですよね

レッシュさん
私はもちろん日本人ですよ。子供は今日本とオーストリアの二重国籍

竹中
でも22歳になるまでにはどちらかの国籍に決めないといけないんですよね

レッシュさん
そう。それまでに選ばないといけないのよね

島さん
それまでに法律が変わるかも

レッシュさん
現時点ではオーストリアも日本も二重国籍を認めていないんですよね

島さん
空港の旅券査証の担当からすると、日本の旅券の方がオーストリアの旅券よりいいのよね

竹中
そうなんですね。もし、子供達二人ともオーストリア人になっちゃったらどうします?

島さん
・・・。ね。考えにくい、私は国籍と民族のアイデンティティが一致しすぎてて、本当に考えにくい。そんなの世界的にも珍しいケースなんだけどね。

レッシュさん
私は変えるつもりない

竹中
子供たちが二人ともオーストリア人になって、旦那さんオーストリア人でも?

レッシュさん
変えるつもりない。子供たちはこのままだったらオーストリア人になるんじゃないかなとは思う。でも、私は変えないと思う。

竹中
それはどうして?

レッシュさん
私はずっと日本人だから

竹中
一回国籍変えても日本人に戻ることは可能なんですよね

島さん
大変みたいだけどできることはできるみたいね

レッシュさん
それこそ、のりこさんは?

竹中
私も変えないと思いますね。息子は現在二重国籍で、将来オーストリア人になる可能性は大ですけど・・。日本に長期に行くのにビザが必要になるとか、私は考えにくいです。心が日本人なので