皆さんはコレペティトゥアという職業をご存知ですか?

日本ではあまりメジャーでない職業なので、耳にしたことがないかもしれません。私自身も、コレペティトュアと呼ばれる人たちと関わるようになったのは、ヨーロッパにやってきてからなんです。

今回私は謎多きコレペティトュアの生態に迫ってみようと、ウィーン国立歌劇場でコレペティトゥアとしてお勤めされている吉澤京子さんにインタビューを申し込みました。

インタビューのため、待ち合わせ場所であるウィーン市内の日本料理屋へ向かったところ、なんと偶然にも隣の席に、ウィーン国立音楽大学のコレペティトュアとして働く平野小百合さんを発見!

ウィーンは狭いです。(笑)

急きょインタビューは、平野さんも巻き込んで座談会へと路線変更することになりました。

ウィーン国立歌劇場 合唱コレペティトュア 吉澤京子さん

2011年よりウィーン国立歌劇場合唱団専属ピアニスト。国立音楽大学ピアノ科卒業。ウィーン市立音楽院ピアノ科を最優秀の成績で卒業。さらに同音楽院室内楽科、ウィーン国立音楽大学コレペティトーア科にて学ぶ。2001年国際ブラームスコンクール室内楽部門第3位。オーケストラピアノ奏者としては、主にトーンキュンストラー管弦楽団、ウィー ン放送交響楽団などで長年にわたり演奏。器楽、声楽、指揮の為のマスタークラスの伴奏、またコンサートのパートナーとして欧州を中心に演奏活動をしている。ウィーン在住。

ウィーン国立音楽大学 声楽学科コレペティトュア  平野小百合さん

武蔵野音楽大学大学院ピアノ科修了後、伴奏者としての研鑚を積むためウィーンへ留学。私立ウィーン音楽大学(旧ウィーン市立音楽院)伴奏科にて、歌曲伴奏法・室内楽奏法、その後文化庁新進芸術家在外派遣研修員としてオペラコーチングを修士課程において学び、全科首席で修了。第23回ベルヴェデーレ国際声楽コンクール・コレペティツィオン部門にてベーゼンドルファー特別賞を受賞。グラーツ国立音楽大学声楽学科講師、ウィーン国立音楽大学教育学科ならびに教会音楽学科をへて現在同大学声楽学科講師。ウィーン在住。

コレペティってどんなお仕事?

竹中
お二人は歌手のコレペティなんですよね。コレペティって一体何屋なんですか?

平野
何でも屋だよね

竹中
何でも屋、、、ですか?職業を尋ねられた場合、いつも何と答えていらっしゃるんでしょう?

吉澤
歌の伴奏をしてますって答えるかなあ。

竹中
でも、それだと伴奏者ですよね?

平野
そうね。歌手のコーチングをしています、って言うこともあるかな。

吉澤
すごく色んな役割があるからね。伴奏者よりも、むしろ指導者に近いんじゃないかな。

平野
シチュエーションによって違うのよ。指揮者がいたら伴奏者に徹するし、いないときは指揮者の代わりのようなことをするし。

竹中
合唱のコレペティの場合、歌い出すキューを出すのとかやっぱり大事なんでしょうか?

吉澤
今の職場での私の役割は、合唱の音楽稽古のコレペティなの。合唱指揮者がいるから基本的には伴奏者に徹していればいいんだけど、ひとりで弾きながら指導しなくちゃいけないシチュエーションもある。そういう時は頭を振ったり、片手で弾きながらもう片方の手でアインザッツ出したり、口で1、2、3って言ったりする。

竹中
曲全体が見えてないとできないことですし、ほとんど指揮者ですね

吉澤
昔は、指揮者が指揮者になる過程でコレペティをすることが多かったんだよ

平野
最近減ってきちゃった様だけどね

竹中
そうなんですね

吉澤
小さい劇場なんかだと、未だにコレペティと指揮者、どっちもできなくちゃダメなところがほとんどじゃないかな

平野
そう。指揮者兼コレペティトュアいうポストでオーディションの募集がかかったりする

吉澤
ウィーン国立歌劇場くらいまで大きくなっちゃうと、分業になるんだけどね。でも、大体の劇場指揮者は両方できるんじゃないかな。

竹中
では、お二人は指揮もできるということですか?

平野
いや、私はやらない。

吉澤
私もやらないよ。

竹中
なんだ、 やらないんですか?

吉澤
やりたいとも思わない!!(笑)

平野
やりたいとも思わない!!(笑)