8428322118_93ee7b2bdb_z

photo by Petras Gagilas

 

ここ4~5年、ハンドメイドがブームだ。

 

「もっと個性を!」「スキをカタチに」のようなキャッチコピー、「エコ」や「リサイクル」などのキーワードとともに、tetote、minne、メルカリ、ラクマなどのようなハンドメイド・フリマプラットフォームの充実が、ブームを後押ししている。“売れっ子”作家が次々とうまれ、”主婦の副収入”としても人気だ。こちらの記事のように、「承認欲求が満たされる」という分析もある。(http://aco220.com/archives/949)

 

 

しかし、今でこそ“ロハス”と言う言葉が定着し”ハンドメイド=オンリーワンのオシャレ”な感覚で、持てはやされているが、10年前で有れば、ただの”手作り品”と呼ばれていたのではないだろうか?そして、その頃は、手作り品よりも既成品の方が価値が高いと認識されており、手作り品は町のスーパーなどに入っている手芸屋さんの品くらいしか目には付かなかった記憶もある。

それが、今では職人でもない一般人が、広場や会議室、公民館を借りてイベントを行うのが当たり前のようになった。
その事自体に思うところはないのだが、いわゆる“普通の人の手作り”のどこに価値を見いだせるのか、落ち着いて考えてみてもよいのではないかと思う。ハンドメイド=価値の有るもの、と言うのは自明ではないはずなのだ。おそらく、これがブームというものなのだろう。

 

このブームの裏側で、あまり語られていないことについて私の観測範囲から話してみたい。

 

 

ハンドメイド作家たちの派閥、グループ、人間関係

 

実は、私も”ハンドメイド”活動をしている。

 

例えば、靴下で作るヌイグルミ「ソックスモンキー」や、樹脂粘土でつくるオリジナルキャラクターのインテリア雑貨。ミシンを購入してからは犬や猫のペットグッズを作ったりしている。気まぐれな性格なので、ハンドメイドイベントやフリーマーケットで多くて月に1回の出店、その他はネット販売しかしていないが、おおよそ平均すると月に5~8万程度の売上がある。

専業ではなくこの数字ならなかなかのもの…のように思えるかもしれないが、この売上から材料費やイベントのブース代金、ネットの販売手数料…と諸経費を引くと、趣味を兼ねての制作なので気にならない所だが、完全なる副業と考えるなら…というところである。

 

昨年の話になるが、私は数名のグループに呼ばれ、一緒にハンドメイドの物販のイベントへ参加させてもらうことになった。他の方々とはそのときが初対面で、それまではブログやFacebookでの文字でのやりとりしかなかったのだが、実際に会ってみると、とても良い人たちに見えた。

しかし、イベントの出店を重ねるうちに、女性特有の「なぁなぁ」な慣れ合いや、売上アップという名目でお互いの商品を「買い物ごっこ」をするのを目にして、住む世界の違いを感じるようになった。そして、わたしは撤収。そのグループから離れて1人で活動をするようになった。もちろん、イベントなどで、そのグループの作家と偶然に出会うことも有る。しかし、完全な赤の他人状態だ。

 

私が撤収した日を境に、私のブログやネット販売サイトは、炎上までとは行かないが悪意のある書き込みが多くなり、常に監視されているような状態になっている。

 

その他、ハンドメイド界隈には面倒な人間関係が多い。

 

ブログやSNSを駆使して、回りくどく売ろうとする人。

交換会と希望という名のもとで

自分の作品の在庫の押し付け&高価な物の要求。

頻繁に、SNS作品でプレゼント企画…などを行う、人気集め。

趣味でハンドメイドをしている方々に対する、副収入派からの根拠の無い悪評。

作品に関係ない容姿などの罵り。

 

一番驚いたのが…

「読者登録させて貰いました!◯◯さんの読者外して、私の読者になって下さい。」

と、ブログのメッセージ機能を使い、露骨なグループへの勧誘が来た。

私はグループなどに加わりたくないのでメッセージを無視していたところ、翌日には、メッセージ主の知り合いが立ち上げていたハンドメイドのコミュニティから削除されていた。

特に愛着もなく、自由気ままに活動したいので何も思わなかったが、こういうところが「奇人、鬼女」が多いと呼ばれる理由なのかもしれない。

 

発言小町などではハンドメイドについてのこうした話題が多いので、興味のある方はのぞいてみるとよいかもしれない。

http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/0602/715709.htm

http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2010/0302/298632.htm

http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/0524/714444.htm

 

 

 

パクリ問題

 

数年前のことになるが、私の知り合いのハンドメイドショップのオーナーが、販売を委託されていた作家さんの作品をトレースして売っていたことがあった。そのことについては凄く衝撃を受けたのだが、その時、何故か運悪く、私が双方の仲介役になるハメになった。

気の向かないまま、双方に話を聞いたところ…

 

委託作家のトレースされた方の言い分。

「2枚の作品の写真を照らしあわせても、完全なコピーだし、私の作品の劣化版。ばれないと思っているのか私のイラストまで使っているしやめて欲しい。」

いろいろ聞くうちに面倒になり、簡易裁判を提案したのだが、なぜかそのことについては聞く耳を持ってくれなかった。

 

そして、オーナーさんの言い分。

「クマ、花、女の子のイラストは書いたけど、似ているのはたまたまな訳で…もう、迷惑なので連絡しないで欲しい。そしてFacebookやブログを監視されるのはプライバシーの侵害だ」

反省の色も、トレースを辞めるような素振りもなく、なぜか被害者面で、話にならない状況であった。

 

パクリであることは間違いが無いようであったので、オーナーさんのほうが悪いことは確かなのだが、どちらも自分から行動を起こすことはなく、自分の主張を聞いてほしいだけのようで、私としては非常に困った。

 

このような話はいくらでもある。

Google検索してみても、かなり多くの記事が見つかる。(もちろん虚実あるだろうし、一方当事者の視点だけで書かれているものが多いが。)

https://www.google.co.jp/webhp?sourceid=chrome-instant&ion=1&espv=2&ie=UTF-8#q=%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%89%20%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%AA

 

あまり一般論にしたくはないのだが、おそらくは作品を作ること自体が楽しみなのではなく、作った作品が評価されてまわりからチヤホヤされること、作品が売れてお金になること、のためにハンドメイドをしているからなのだろう。そのこと自体は別によいのだけど、そういった人の数が一定数を超えると、こういった問題が起きてしまうのかもしれない。

 

 

 ハンドメイトの販売サイト・プラットフォームについて

 

わたしは、ハンドメイドブームはメディアやプラットフォームが作ったと考えている。

販売サイトの中間マージンのためだ。

 

冒頭にも書いた、tetote、minneなどのハンドメイドに特化した販売サイトは、ネットに展示する料金は無料だが、商品が売れた場合、売上の10〜20%を手数料として差し引く(プラットフォームによって異なる)。それがプラットフォームの利益になるのだ。

1000円の商品が売れて100円の手数料、というような世界なので、プラットフォームがビジネスとして成立するためには、とにかく登録しているハンドメイダーの数を増やすことが必要だ。それはもちろん簡単なことではないのだが、広告戦略が上手くいったといえるのだろう。

 

ハンドメイダーは、自分のネットショップを持てたのが嬉しくなり、ブログやSNSで宣伝をする。そして、そこからまた新たな登録者数が増え、どんどん広がっていく。そうすると、テレビやネットのバナーでの宣伝料金も抑えられる、という、仲介する販売会社にとっては有益なループが生まれている。

 

しかしながら、実は、人気作家と呼ばれる人達は、すでにそういったプラットフォームからは撤退している。なぜなら、ある程度人気のある作家は、そういったプラットフォームに頼る必要がなく、独力で販売するほうが手数料もかからないからだ。そして、人気作家の去った販売サイトで残るのは…人気作家の作り上げた相場だけである。

プラットフォーム側でも、次世代の人気作家を無理矢理押し出そうとしている企業努力は見えるものの、流行りに流されて似たり寄ったりな作家が多かったり、作品も類似品で溢れかえっている。人気ランキングなども人気作家を作るための有効な手段とはいえるが、人気投票欲しさに人気投票をする人の方が多いので(”人気投票返し”が目的。Facebookの「いいね」と似たようなものだ。)、あまり機能しているとはいえないだろう。

 

販売サイトからは、「売れっ子作家への道」や「今週の新しい作品のピックアップ」などと言う、役にも立たない(辛辣で申し訳ないが。)メールマガジンが定期的に届く。そういったものにノセられて日々小遣い稼ぎに勤しむ主婦たちが相当数いるようだ。作品を売ることはできなくても、販売プラットフォームの宣伝はしてくれる。

 

なんだか暗い話しばかりになってしまったが(そういう連載なのだが)、ハンドメイドブームのおかげで、本当に技術のある作家さんが脚光を浴びるのは、喜んでもよいことだと思う。

そして、それを踏み台にして自分で企業に売り込みなどの努力をし、オリジナル作品を商品化したりする作家さんもいる。

技術だけはなく、斬新さ、冒険心。そういったものはブームでつくり上げることはできないが、評価されてしかるべきものが評価される、という意味はあるのかもしれない。

 

 

 

売れっ子作家たちは、日夜、職人並みの制作活動をしている。それがビジネスとして成功している人も一握りは存在する。こうした方々の活動や成果は素直に素晴らしいと思うし、とても尊敬している。しかし、そういった成功の側面だけを見て、ハンドメイド=儲かると勘違いしている人が、あまりにも多いのも事実だ。メディアやプラットフォームが煽っている面もあると思うし、そこはメディア・プラットフォームにも問題があると感じているが、そこにノセられてしまってはいけないと思う。

 

基本に立ち戻って、作ることを楽んでみてはどうだろうか?

そして、売れないと嘆き共感する仲間同士の傷の舐め合いをする事や、毎日躍起になってSNSを駆使してアピールする人が多いが…

「宣伝に力を入れるより、技術を磨け」と思う。