まだ冬の寒かった頃に、友人に誘われ、とあるシアターに足を運びました。
自ら脚本を書いたという英語でのモノローグ”Echoes of Myself”は、感情がなだれ込んでくる、心をえぐるような一人芝居。
たった一人でステージに立ち、語り、涙し、踊り、喜び、空間を支配していた日本人男性。
それが、ベルリンで舞台を中心に俳優として活躍する、Takumi Bansho(番匠巧)さんでした。

 

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オーディエンスは二つの人生を見ている。「舞台は何よりも魅力的です」

>>演劇はどこで学ばれましたか?

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校(CSULB)で、シアターの演劇を専攻しました。
その後、色々なアクティング・スクールなどで出来る限り学んで。
演劇のベースはずっと、LAでした。

 

>>これまで、どのようなものに出演してこられましたか?

舞台、フィルム、コマーシャル、プリント、広告、ミュージック・ビデオなどです。
でも主は、舞台にフォーカスを置いてやって来ています。

 

>>舞台をメインにする、切っ掛けは何かありましたか?

元々渡米したときから、舞台俳優になりたいなと思っていました。でもそれは今の自分から見たら、気持ちが弱くて。
舞台、いいじゃん・・・くらいの気持ちでした。

でもある日、小さなシアターのプレイを見た時、頭は何も働かず、ただただ心がかき乱される、言葉では表せない感情に飲み込まれました。
当時のアクティングの先生に話したら、
「舞台で立っている俳優は、お客さんから見て、その舞台の中で見えないボートに乗っているのだ」と、「オーディエンスはその俳優の二つの人生が見られる」と。
プレイの中で生きるキャラクターと、俳優自身の人生を、ゆっくり・・・上演時間が流れる中で、川の上でボートが流れるように、その人のその時の時間を見られる。
その人の生きるキャラクターとその人自身の人生を見たときに、心が強く動かされて。
そこから本気で考え始めました。

 

>>二つの人生ですか。素敵なお話!

そして舞台は他よりも、自分に得られるものが多いと思います。

 

>>得られるもの?

ベタになってしまいますが、自分で見えない間・知らない間に設定しているリミットというのがありますよね。
それを、毎回舞台が終わる頃には、数ミリでも何かしら乗り越えられたものがあったのかなと。
もちろん、次への課題を考えさせられるのがほとんどですが・・・
またアクターとしてはもちろん、人としても舞台毎に一歩一歩、成長していっていると信じてやっています。
自己満足ではなく、反省すべき点などマイナス面も含め視野を広げさせてくれるような達成感というか、そういうのがあるので舞台は何よりも魅力的です。

 

 

モノローグ、シアター・プレイ、フィジカル・シアター・・・ベルリンでの舞台

>>舞台と言えば、わたしが初めてTakumiさんを拝見したのが、ご自身に関する独演劇”Echoes of Myself”でした。モノローグは初めてだと言っておられましたが、自分をさらけ出すことは怖くなかったですか?

凄く怖かったです。一人芝居も初めてでしたし。
でもそれが、一つのテーマだったんです。
「自分が抱えてきたアイデンティティ。それを内に秘めたまま、閉じ込めたままにしておくのか?それとも外に出す事によって、自分の中でどう変わるのか?」
自らの弱みを人前にさらすことによって、何かを変える事ができると考えていたので。
上演は怖かったですが、やってみて・・・やらないよりは良かったと心から思います。可動域が広がったと信じています。

 

>>独白には、とても心動かされました!このインタビューにあたり、上演予定の2つのシアターのリハーサルにも同行させていただきました。それぞれの詳細について教えてください。

6月に公開する舞台は、International People’s Theatre Berlinというシアターです。
2015年の10月にオーディションがあり、アクターだけではなくシンガーやダンサー、またドイツだけではなくアメリカ、イギリス、オーストラリア、スペイン、チェコ、フィンランドから様々なバックグラウンドを持つ人々が集まり、一つの作品を作ろうというコンセプトの元で集まったプロダクションなんです。

 

>>テーマは何ですか?

”home”です。
一人一人「homeとは何か?」と、それが全ての始まりでした。
今日のリハーサルみたいに、ホームに関するようなシーンを盛り込んだり、ソロパフォーマンスがあったり。
”home”をベースに、7ヶ月くらいこの仲間で作り上げてきています。

 

>>その中でTakumiさんは、どういう役割を演じますか?

今回は、僕自身ソロ・パフォーマンスに重きを置いてきました。
自分自身で感じる”home”というのがあって、それを表すのはすごく難しかったのですが・・・
ただ今回はモノローグのように自分自身だけではなく、皆でやっているので、皆との交わり合いを気にしつつ、自分の役割を考えながらやってきています。

 

>>もう一つのシアターTATWERKでのリハーサルは、ダンス的な要素が強かったですね。

”KOMPANIE PROJEKT”という名の下、感情などを言葉なしで身体全体で表現しています。
2部構成になっていて、前半は身体メインのフィジカル・シアター、後半はフィジカル・シアターにシーン要素を加えた、シアター色の強いもの。
こちらは12月に公演があります。

フィジカル・シアターで学ぶ事は、今までLAに居た頃には経験したことがない事ばかりです。
こんな表現の仕方が有るんだな!と、常に驚きと発見の毎日。
言葉ではなく、言葉で表せないものを身体全体で表すというのは、とても難しい。
でもこれをやらないわけにはいかないだろう!と、一度始めた今はただそう思うばかりです。

 

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