カフェ文化がいつの間にか人々の生活に馴染んでいる21世紀。喫茶店という言葉が廃れていくと同時に登場したカフェですが、読者の中には馴染みの店があるという方も多いんじゃないでしょうか。

 

ワーキングスペース、買い物の休憩がてら、頑張った自分へのご褒美、親しい友と語らう場。利用する人によってカフェは色々な顔を見せます。では我々にカフェを提供してくれているカフェオーナーの顔は?

 

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会社の一次面接で落とされそうな風貌の丹澤亜希斗さん。

 

甲府市でAKITO COFFEEを営む丹澤亜希斗さんに初めてお会いした時その風貌から「若い仙人」かと疑いましたが、私よりも年下だと知って驚きました。もちろん彼は仙人ではないし、修行に励む達人でもありません。ただ一人のコーヒーを愛する若者です。

 

AKITO COFFEは開業から2年目を迎え、たち消えゆく個人飲食店が多い中で繁盛している様子。きっと私生活も順風満帆で休日にはセレクトショップを梯子して「トレンドを追いかけてないと落ち着かなくて(照)」みたいなことをツイートしているに違いありません。その先入観が正しいか確かめるべく色々伺ってみました。

 

-お忙しいところ取材に応じていただきありがとうございます。

よろしくお願いします。

 

-早速作っていただいたラテを一ついただきますね。飲みながらで失礼します。

どうぞ。

 

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-あ、何これ柔らかい。すごい優しい味がしますね。飲みやすくて、これならコーヒー苦手な方でも好きになれそう。

うちは苦さを抑えて豆の甘みとかミルクの旨みを出してるんです。世間の好みとは違うかもしれませんが、僕的にはこっちの方が好きで。

 

-コーヒーにハマり始めた人って苦ければいい、コクがあればいいみたいに思ってるとこありますもんね(自分のことだとは言えない)。

基本的にどんな豆でも煎れば煎るほど苦くなりますから。それよりも豆本来の味を楽しんでもらいたいんですよ。

 

-なるほどなるほど。女性にウケそうですね。お客さんも女性が多いんじゃないですか。

どうでしょう。半々くらいですかね。世代も色々で、曜日問わず大学生とかも日中に来たりしてますけど。

 

-あー、あいつら暇だから。

そこは時間に余裕があるって言っておきましょう(笑)。

 

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お洒落なカウンター。陽当たり良好。

 

丹澤さんが海外に足を運ぶ理由

 

-甲府も南口(※AKITO COFFEの反対側)に所々カフェがあるものの、ちょっと寂しい感じですよね。

そうですね。カフェのタイプも少ないですし。外国に行っていろんなカフェを見ると、山梨だけでなく日本全体がカフェ文化に弱いなぁ、って思います。

 

-外国の話ですか!急に話のスケールが大きくなりましたね。

年に一回は海外に行ってるんですよ。

 

-パツキン美女探しの旅ですか。

勉強のためですね。

 

-すごい。外国なんて観光ですら行ったことないですよ。

去年はアメリカに行ってきて、今年はヨーロッパに行きました。お国柄によってカフェの形態が違うんで、面白いんですよ。都会なら人が忙しなく利用していたり、ちょっと閑散としたところに行くとノンビリしていたり。まぁそこらへんは日本のカフェと同じか。アメリカはブルーボトルみたいに大きな倉庫を利用してボーン!と一軒広々と建っていたりしますね。

 

-さすがアメリカ。ですが日本にもAmazonの倉庫がありますからね。負けてませんよ。

Amazonも海外の会社ですけどね。ロンドンは反対にこじんまりしていて、スピーディにお客さんを捌く感じでした。もう人が滅茶苦茶ギュウギュウ詰めで、圧倒されます。そう言った意味では東京っぽいかもしれません。

 

-東京なら行ったことありますよ。今度都内に遊びに行ったら友人にロンドンへ行ったと言うことにしますね。亜希斗さんから似たようなもんだと聞いた、という免罪符を持って。

やめてください(笑)

 

-わかりました。やめます。では国内のカフェに行ったりしないんですか?

あんまり行かないですね。海外の方が、何歩も先に進んでるっていうか…。あえて行くことはありません。

 

-世界を語る男が今目の前にいる感動。やっぱ進み具合は東京といえどもマリオブラザーズの1-2くらいですか。クッパはまだ先だぞ、みたいな。

ちょっと違いますね。東京から発信されているコーヒーの文化も、海外から輸入されている「二番煎じ」なんですよ。オーストラリアとか北欧を見ると遅れてるなぁって感じます。

 

-日本人が最先端だと信じてやまない東京をもってしても、コーヒーという分野では第一人者になれないんですね。

あっちの方が断然レベルが高いんで。日本から発信っていうのは無理かなぁ。本当にレベルが違いすぎます。僕は今北欧のコーヒー文化に注目してるんですけど、あっちの人は舌も肥えているのもあるし、日本人が今の状態でコーヒーと付き合ってたらとても追いつけないですよ。

 

-日本の若者って、カフェに行く目的がコーヒー以外をメインにしてる人が多いですもんね。

そうですね。日本じゃカフェ=自分の居心地を求める場所っていう風に捉えている人が多いかもしれません。海外は完全にカフェ=コーヒーという文化が出来上がっています。僕はそういうのを勉強して、甲府から発信できればいいなと思いながら店をやってるんですよ。

 

-ワールドワイドの価値観が甲府を侵食する。そんな未来を信じてます。

全然需要ないですけどね。

 

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お洒落カフェには欠かせない黒板も完備。

 

一年365日、頭の中はコーヒーだらけ

 

-お店が開いて2年経つと伺いました。やっぱりコッチ(指で丸を作る)もかかるし、個人店の営業って大変でしょう。

初期投資もかかるし、やっぱり続けていくのは楽じゃないですね。まぁお金の話はいいじゃないですか(笑)

 

-やっぱりお金の悩みはつきもののようですね。そうなるとカフェ経営に追われる毎日が嫌になったりしないんですか。

僕的には別にストレスを感じることはないですね。週に一回休みがあればいいかな、って。あとは毎日コーヒーのこと考えてれば十分です。

 

-毎日コーヒーのこと考えてるって、それじゃ休みないのと一緒じゃないですか。もっと若者らしい遊びがありますよね。ネットの掲示板を荒らしたりしてストレス発散とか。

無い、なぁ。本当にプライベートな時間は少なくていいんですよ。もっと言えば、今以上にコーヒーに触れる時間、勉強する時間が欲しいと思ってます。最近はスタッフを雇ったりして、コーヒーについて学ぶ時間を増やしたりしてます。

 

-違う意味でカフェイン中毒になってますね。というかアルバイトさんもいらっしゃるんですか。その若さで後進を育てる気概に驚きです。

(笑)週末に来てもらったりしてます。いずれは店を完全に任せられる人を作って、自分は焙煎に集中するのが目標の一つです。

 

-焙煎って生豆を煎ってコーヒーとして飲める豆にする作業ですよね。それをずっとやりたいんですか。

やりたいです。ずっと豆のこと考えていたいです。

 

-そんなキラキラした目で語らないでください。自分が情けなく思えてきます。そのうちコーヒーと子孫を残しそうな勢いですね。

それは物理的に無理ですけど、単純に好きなんですよ。難しいことは考えてません。

 

-そもそもコーヒーとの出会いはなんですか。

元々コーヒーそのものに興味があって勉強はじめて、そのうちラテアートに手を出して…っていう流れでのめり込んで行きました。今ではラテアートはどっちでもいい、って感じですが。

 

-カフェを始めようと思ったキッカケも、オシャレだとかではなくコーヒーが好きだから、って理由ですか。

お店の方はちょっと違います。もともと何かしら独立して店をやりたかったんですよ。学生の時に「多分普通の会社勤めは無理だな」と思って、飲食店で修行したのがはじまりです。

 

-で、コーヒーの世界に行き着いたわけですか。

そうですよ。コーヒーって世界と繋がってるじゃないですか。日本だけじゃなく、世界共通で愛されている飲み物。そこが好きなんです。

 

-たまにネットゲームやるんですけど、時々海外の人とマッチングして回線が重くなって、世界と繋がっていることが腹立たしい時があります。反対ですね。

反対…なんですかね(笑)

 

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どこを撮影しても洒落てます。意地になってダサいとこ探したけど無理でした。