CIRCUSの第2回特集「いいカラダ。」いかがでしたでしょうか?

前回と同じように参考資料だけおいておきますね。

 

目の見えない人は世界をどう見ているのか  (伊藤 亜紗)

 

表題のとおり、視覚に障害を持っていらっしゃる方がこの世界をどのように認識しているのか、視覚に障害のない人とどのように違っているのか、について語られています。と書くと通り一遍なかんじがするのですが、他の語られ方と違うのは、それが「美学」という視点で語られるということと、リサーチや聞き取りの結果から一般論を引き出さないことです。

視覚に障害があるといっても様々で、少しだけ見ることができる方もいるし、最初から見えないのか、それともある時期から見えなくなったからによっても全く違う。それ以外にも様々な要因で、目の見えない人たちの世界といっても非常に多様な違いがあることが分かります。

翻ってみると、目が見える人の世界も本来は非常に多様であるはずで(例えばイチローが見えている世界と、私のような書斎に陰干しされてるような人間が見ている世界は違うはず)、同じ人間だし同じような世界を認識しているはず、というのは便宜上そうされているだけなんだと思います(だってそんな細かい違いを考えてたら面倒でしょう?)。

まえがきでも少し触れられているのですが、とかく一般的 / 抽象的にまとめられがちなカラダについて、様々な点で示唆を与えてくれる本でした。

 

[追記]

とても興味深いワークショップを開催されたようです。当日のダイジェストが配信されていますのでぜひ御覧ください。(下記ページの下のほうに動画へのリンクがあります。)

http://www.mori.art.museum/blog/2016/08/post-271.php

 

柔らかヒューマノイド―ロボットが知能の謎を解き明かす  (細田 耕)

 

主にロボットに二足歩行をさせるための試行錯誤の過程について書かれた本です。

内容はわりとガチで、人間の関節や骨格、筋肉の働きについて分析しつつ、ロボットを使ってそれを再現するためにはどうしたらよいのかが検討されます。面白かったのは、いかにして計算を分散させるかという視点。関節や筋肉の位置や形がいまの位置・かたちであることが、脳の計算を代替するような働きをもっているという点でした。そのおかげで、環境そのものや自分自身の状態をシミュレーションしたりする必要がなく、またそれを伝達する手間もかからない。

なるほどーと思うと同時に、この世界の物理法則といまのような形に進化してきた生物たちの時間について思いを馳せてしまいました。

 

生物から見た世界 (ユクスキュル)

 

環世界の概念を提唱した、もはや古典ともいえる一冊。ジャンル的には動物行動学に分類されるのだと思いますが、人間の身体について考える場合にも読んでおきたい本です。

 

バガボンド (井上雄彦)

 

バガボンドはいくつかの大きなテーマを含んだ漫画だと思いますが、「身体」と「自意識」の関係についてというテーマはその中でも大きな位置を占めています。自意識にとらわれればとらわれるほど、身体は思いどおりに動かなくなる。”自意識”と”思い通り”は同じところから生まれるものであるにもかからわらず、斬り合いにおいてまったく別のはたらきをします。

自意識は思い通りに身体を動かすためにはまったくもって邪魔になる。けれども、その自意識がなければ武蔵は、剣は、ここまで来ることはできなかった・・・。そして、自意識があるからこそ、友との、大いに”異常”なコミュニケーションが成り立っているのだろうとも思います。

さまざまなテーマがからみ合いつつ、そろそろ武蔵の青春の物語は終わりそうです。どんな結末であっても寂しくなりそうですが、とても楽しみですね。

 

コンテンポラリーダンス徹底ガイド (乗越 たかお)

 

コンテンポラリーダンスのダンサー、振付家、演出家の紹介がされています。この本を片手にYoutubeをぜひ。

 

呪術の人類学

 

ある言葉を発すると、誰かが呪われて精神に変調をきたしたり、死んだりする。これこを究極の言葉と身体の関係ではないでしょうか。

もちろん信じてはいないですが、とはいえでも。それがこの本のテーマでもあります。

 

こつとスランプの研究 (諏訪 正樹)

 

一人称研究、自分自身の身体に対して言葉をつける、という興味深い研究です。

 

知覚の現象学 (メルロ=ポンティ)

 

”哲学とはおのれ自身の端緒がたえず更新されていく経験である”

言葉は身体から生み出されるものであると同時に、自分自身の身体を変えていくものです。