※この記事は、特集「よくわからなくなるお金のはなし」の記事です。

 

「こんな人生やってられっか!」どこかパンク魂を感じる言葉だが、昨今 こんな風に感じてる方は多いのではないだろうか。

ありとあらゆるモノはあふれ、情報は簡単に得る事ができる時代。「自分らしさって?アイデンティティってなんだったけ??なんかもう分からないから皆と同じでいいや。」

普通が良いという風潮が漂ってる現代社会。でも、何か満たされないない自分の心。同じことが淡々と続いていく毎日。

こんな微妙な時代に出来た、斬新なリメイクファッションブランドを紹介したいと思います。

 

その名も、「途中でやめる」である。

 

途中でやめる」は、キョンキョンこと 小泉今日子さんや、今人気急上昇中のアイドル、でんぱ組.incの夢眠ねむさんが着ていることで、巷でジワジワときてるリメイクファッションブラ ンドだ。 ネットでの受注、販売、地方のお店への納品が主だが、近年様々な場所で 直売をやったりしている。ネットでの販売は小一時間後にはsold outになる人気っぷ り。

 

 

 

山下陽光(やました ひかる)さんがデザインから製作を手がけていて、オーダーメイドで好きな文字を入れてくれたり、一着の洋服にいくつかの生地を使うという、どれも一点モノの洋服だ。私が一番驚いたのは、毛糸で文字をミシンで縫いつけるという斬新なアイデア。こんな商品が今までにあっただろうか。

 

 

そして、何より心をキャッチするのは、今まで洋服では見たことのないようなデザインがしてあることだ。いびつなデザインの洋服や洋服に丸が大きくあるもの。もう絵画みたいである。

 

http://tochudeyameru.tumblr.com/post/143007186783

 

 

とてもダサ可愛い。 ファッションの新たなジャンルを確立している気がする。万人受けするわけではないかもしれないが、好きな人はとことん好きになっていくブランドだ。

 

そして、デザインの良さとは別に、もう1つ「途中でやめる」には大きな魅力がある。それは「価格」である。

オーダーメイド、一点モノと聞くと、とても高い値段を想像する。

ところが、「途中でやめる」は違う。 6000円あればお釣りが来る。Tシャツは2000円。ち なみに送料無料。破格。逆に大丈夫かと、こちらが心配になる。 価格が安い、ということは生地が安っぽいとか、ディテールで手が抜かれているかと思いきや、そんなことはない。生地はとてもしっかりとしている。

なぜこんなことができるのか。

以下は、山下さんのブログからの引用だ。

 

まあ金の話はいいよ、いやもっとしておこう。
例えば、途中でやめるの6800円のワンピースが取引き先のお店で売れた場合。
私の所に入ってくるお金はなんと800円なんです。
売値の30~40%がお店の取り分で、
70~60%が途中でやめるの取り分なので
6800×0.6=4080円
古着&生地&糸代 =1000円
ワンピースを作ってもらう料金2000円
送料280円

合計3280円
4080-3280=800円

800円ですよ。200着売れて16万円。
200着なんて売れるわけないし
たぶん売れたのは30着くらいですよ。
24000円ですよ。家賃も払えない。儲かるわけがないんですよ。
それをやってるから、売れますよ。原価率の高さを見て下さい。飲食店よりも高いです。

儲けない株式会社より引用

 

商売としてみれば、成立しているとは言えないだろう。だが、できているのだ。なぜできているのか?

大量生産型のファッションブランドとは発想の源が違うことはたしかだ。

 

***

昔は雑誌を見て、今の流行りを知り、みんな同じような格好をしていた。 「本当に同じでつまんないなぁ。」とは思っていたが、奇抜な格好をした ら周りから人が離れていくし、かと言って流行を追えてない服装をしたら、 これまた仲間から外れていく。

しかし、「本当にこのままでいいのか?自分らしさって何だ?好きな事好きって言ってがいけないのだ?面白く生きていきたい。」と、悶々として いた時に、たまたま発見したブランドが「途中でやめる」である。 何かが吹っ切れた気がしたのを覚えている。

最初はただブランド名が面白いから頻繁にチェックしていたのだが、「途中でやめる」の山下さんの「アンチ社会!」的な発言や行動、同じ洋服を大量生産 してる現代のファッション業界にメスを入れたような斬新でオリジナリ ティ溢れる洋服。他にはない自分を表現する一つの手段である洋服たち。やはり何よりブランド名が面白い。途中でやめたら駄目でしょ!

 

以前に、山下さんにお会いする機会があった。「こんな面白い洋服作る人は、どんな考え方してるんだろう?」と、ドキドキしながら「途中でやめる」の服を着て会いに行った。山下さんとお話しした時、「全く儲けてないよ、本当に。家賃払えるかな~ぐらいな感じだね。にしても、自分が実際に作ったものを着てる人を見てると嬉しいねぇ~。」と笑いながら話していた。

 

そんな感じで、誰かと誰かを繋いでほとんど儲けない会社が、儲けない株式会社です。

儲けない株式会社より引用

 

儲けを無視しながら、高速でミシンを踏みヒーヒー言いながら「一期一会」「人との繋がり」を大切にしながら、今も山下さんは沢山の ユニークな洋服を作っているはず。

 

ユニクロにも、H&Mにも、ルイ・ヴィトンにもわたしは恨みはないし、潰れてしまえとも思わない。たぶん山下さんも同じだと思う。山下さんがたたかっているのは、ユニクロやルイ・ヴィトンを成立させている、気持ちの悪い何かなのだ。

「途中でやめる」が儲けない先に何があるのだろうか。

いや、何もないのだろう。でも、「途中でやめる」が「途中でやめる」であり続ける限り、山下さんは勝ち続けられる。おおげさな理想も理屈も付けずに、資本主義が決めたルールのなかで。それはとてもかっこいい。

「途中でやめる」は途中でやめないのだ。

 

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