羊羹やあんこのお菓子などが手に入ったら、きっと緑茶を淹れるだろう。

あんみつ、干菓子・・・和菓子に合わせた緑茶とのマリアージュがある。

チーズだったら・・・ワイン、白がいいだろうか?

乾物系なら・・・日本酒?

そして洋菓子なら、やはり紅茶だ。

 

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photo by Annie Mole

 

マリアージュと聞くと、私は毛利元就の「三矢の訓え(三本の矢)」の話を思い出す。

それぞれの紅茶やお菓子がそれほどの力がなくても、一緒になるとそれぞれが各々の美味さを引き出してくれる。

 

もし何かお菓子をもらって紅茶を淹れようと思う時、合わせる紅茶は少しクセがあったり、ガツンと渋みが強い方がいいと思っている。

渋みやクセがお菓子の甘ったるさを口中からするりと胃に流し、またお菓子を口に入れたくなる。

お菓子を入れるとまた口中が甘ったるくなり、それを紅茶の渋みが流してくれる。

以下続く。

紅茶を学ぶときに必ずと言っていいほど出てくる「スコーン」

パン屋さんやお菓子屋さんにも今は並んでいることが多いが、その店によって味が違う。

使用素材自体はそれほど大きく違うものは入っていない。

粉とバターが基本の素朴なお菓子だ。

そして大概はボソボソで単品で食べると飲み込みにくい。

カフェなどで出てくるときはクロテッドクリームやホイップ、それにジャムなどをつけて食べる。

これにはミルクティがとても合う。

びっくりするほど合う。

食べたことがない方は是非一度ミルクティと一緒に食べていただきたい。

 

生クリームたっぷりのケーキとミルクティもこれまた合う。

口中の生クリームの乳脂肪をミルクティの乳脂肪が胃に流してすっきりとさせ、また生クリームを欲するようになるそうだ。

 

 

 

 

「紅茶の基本」(エイムック2078)という本の中に珈琲の堀口俊英氏と紅茶の磯淵猛氏の対談が載っている。

 

堀口「食とのバランスでいえば、珈琲も紅茶も大事ですね。日本でも20年くらい前までは、珈琲でフィニッシュだった。そこに紅茶が入り込んだ。」

 

磯物「珈琲はカップ一杯で評価できますが、紅茶はウィズフード。食べ物を楽しむためのスタイリングは重要です。イギリスでは、テーブルについたらまず紅茶、食事中も紅茶、食後も紅茶。一日でいえば朝食も紅茶、こってりとしたランチにも紅茶。ディナーの最中はワインですが最後も紅茶。(以下略)」

 

堀口「紅茶は口の中をリセットする効果がありそうですね。」

 

磯淵「タンニンが油を分解するので、ひと口目の美味しさを回復してくれるのです。(中略)紅茶をもっと広げようかと考えた時に、若い人たちが何に関心を持っているかというと、カレー、ラーメン、ドーナツなどの食べ物(笑)。食べ物のペアリングの良さからも、紅茶に注目が集まっています。」

 

とある。

なるほどと納得する。

麦茶やほうじ茶のように薄く淹れることで、紅茶は和食にも合う。

こってりしたステーキを食べたときも、しっかりと渋みのある紅茶を飲むことで口中の油がすっきりと流れるのを感じる。

ケーキの油も同じ原理なのだ。

 

 

遥か昔。

ポルトガルやオランダによってヨーロッパにもたらされた中国の茶。

それに魅了されたイギリスはポルトガルとの政略結婚により手に入れたインドの地に茶の種を植え、自生の茶をも慈しんだ。

そして茶を愛しすぎた大英帝国は増え続ける茶の輸入(と戦費)で多額の銀を失い、インドで育てたアヘンを茶と引き換えにすることで茶の祖国である中国を滅ぼすことになる。

 

大英帝国の支配によって、多くの犠牲の上に築き上げられた今の紅茶文化。

植民地として支配された人々のことを思うと綺麗事だけではすまないが、それでも確かにイギリスのおかげで今も世界中で紅茶が飲まれている。

 

紅茶が好きな方は紅茶に合うお菓子のことも勉強することが多い。

そこでやはり紅茶との最高のマリアージュを考えてイギリス菓子に行きつくのだが、フランス菓子専攻の友人のパティシエールに言わせると「イギリスのお菓子は洗練されていない」。

言い方は悪いが、確かにフランス菓子は非常に美しい。

繊細で美を追求している部分も多い。

そして、そのケーキひとつですべてを完結できる力がある。

ケーキが主役になれる。

 

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photo by sanch

 

反してイギリス菓子といえば、スコーンはぼそぼそでショートブレッドもぼそぼそ。

クランペットはなんだか固いパンのような食感で、クリスマスプディングもなんだか・・・。

一応レシピなどを調べて、作れる限りのイギリス菓子を友人は作ったが、作り方も雑でそのままではとてもおいしいものは完成しない、と頭を悩ませた。

フランス菓子のように、どう頑張っても主役は張れない。

 

 

だが、なぜだろう。

そこに紅茶が入るとたちまちそのすべてが魅惑のお菓子に変化する。

 

イギリス菓子だけではなかなか主役にはなれないが、紅茶と一緒になれば怖いものはない。

イギリスのお菓子はそのようなイメージだ。

 

紅茶ありきのお菓子。

お菓子ありきの紅茶。

 

その際に飲む紅茶は酪農大国イギリスに倣って、ミルクティがいいと個人的には思う。

ミルクティに合うものなら、味が濃くて渋みも強いものを選びたいところ。

インドのアッサムCTC、スリランカのウバなどはいかがだろう。

 

逆にフランスのケーキのようにひとつで様々な味が楽しめて世界をもっているものならば、強い個性のない紅茶が良いのではないだろうか。

ケーキを主役として、紅茶を脇役に添える。

 

紅茶だけで主役を張れるものならば、お菓子はなくても良いかもしれない。

例えばダージリンの単一農園のもの。

季節で風味が変わるものなどはそれだけで楽しみたいときもある。

 

 

そういった側面から考えると中国茶(台湾茶)などはお茶が主役な気がする。

中国茶(台湾茶)のお茶請けといえば、ドライフルーツや南瓜の種などの乾きものが多い。

お茶の風味を最大限楽しむために、少し小腹を満たす程度の菓子を食べる。

(もちろん、そこに敢えてお菓子を合わせるという楽しみ方もある)

 

 

 

マリアージュ(ペアリング)、と考えると難しいと思われる方もいるだろう。

しかし、結局のところは食べたいものと飲みたいものを合わせればよいのだ。

 

ただ、ちょっとだけ選ぶときに考えてみるとこれも紅茶の面白さにつながる。

例えば、フランスのメーカーの紅茶を買ってきたときにはフランスのお菓子を合わせるなどからはじめてみれば良いのではないだろうか。

バレンタインの時期にはチョコレートがたくさん並ぶ。
それに合わせてみるならどんな紅茶?と考える。

クリスマスならケーキ。

ローストビーフでもケーキでも紅茶は万能だ。

アルコールもいいけれど、紅茶もいい。

なにせ悪酔いはしない。

 

自分が好む紅茶が数種類か増えたら、今度はその紅茶それぞれに合うお菓子を考えてみるというのも楽しみの一つだ。

たまたまコンビニで手にとったお菓子に紅茶を合わせるなら・・・と考えてみるだけでも楽しい。

 

「なんかおしゃれじゃなーい?」

くらいののりでマリアージュを考えてみたらきっと面白い。

食べること、飲むこともきっとより楽しめるようになる。

家でのお茶の時間がもっと楽しい時間になる。

 

マリアージュ、とはお菓子と紅茶の調和。

もちろんそれぞれが最高においしいのがいいのかもしれないが、それでは少し日常的に楽しみにくい。

例えば、最高級のフランスのフレーバーティと素材に贅をつくした世界一のショコラティエによるチョコレートなんて、マリーアントワネットが召し上がるものであって、我々一般庶民のものではない。(お金が有り余ってる方はいくらでもどうぞ!)

お菓子だけでは物足りないが、紅茶と一緒だと最高に良くなる、というのが私の中でのマリアージュの理想だし、日常の紅茶の風景となりうると思う。

 

 

気軽で、自分が楽しいこと、美味しいこと。

それが紅茶の楽しみのすべて。

 

 

私が個人的に選ぶ最高のマリアージュベストスリーを書き加えておく。(いらない?)

 

  • スコーン(もちろんクロテッドクリーム付き)とクオリティではないウバのミルクティ
  • 濃厚なチョコレートとの煮込みミルクティ(チャイ)
  • ダージリンファーストフラッシュと和菓子

 

是非皆さま、楽しいティータイムを。