※この記事は、CIRCUS第2回特集「いいカラダ。」の記事です。

 

(前編より)

LAで演劇を学び、現在はベルリンの舞台で俳優として活躍するTakumi Bansho(番匠巧)さん。舞台上での全力の演技は、見るものを惹き付け魅了します。
以前にもインタビューさせていただいた彼に、即興・身体表現について改めてお話を伺いました。

 

Takumi_Bansho-3

 

「全てを信じて、その時を生きる」マシ・オカさんから学んだ即興

 

即興はLAにてマシ・オカさんの元で、ほんの短い間でしたが勉強させていただきました。

 

>>マシ・オカさんは日本でも有名ですね!具体的には、どのようなワークショップを?

マシ・オカさんを筆頭に、6人でインプロのチームを作りました。
グループで毎週日曜日に集まって、軽いエクササイズ、お互いを信じ合うことから始め。
その後、即興には色々なスタイルがあるのですが、今回はこのスタイルをやってみようか!次はこのスタイルを、と色々な即興のスタイルを学びました。

 

>>インプロの舞台とは、どのように組み立てられるのでしょうか?

信じることから始まります。

 

>>信じる?何を?

同じ共演者はもちろん彼らの言葉など全てです。
「ここはディズニーランドだ」という即興の設定になって、情報を得たとします。
そうしたら、ミッキーマウスが見える、音が聞こえてくる、ポップコーンのいい匂いがする!
というのを感覚でもって・・・「しっかりとその場に居る」ということを心がけています。
舞台ではなく、ディズニーランドにしっかりと居る。

同じ舞台に立っている人は、自分とどういう関係なのか?
友達であることが即興で出たならば、何年間の付き合い?深い人間関係なのか?知り合ったいきさつは?
・・・などを瞬時に感じ信じる。
たとえ感じてたことが他人の発言によって変わることもあるので、その時は柔軟に変えて、また新しい情報を感じ。
その時を生きる。

 

>>集中力を使いますね。

使ってました。

 

>>即興で演じていて、難しかったことはありますか?

「感情」を出すのが、即興では問題でしたね。
普通の舞台は、もちろん生ものなのですが即興とは違い台詞があって「こういった心理でこういう感情になる」などとリハーサルできます。

でも即興では、すぐにその感情が求められて、出さなきゃいけないんです。
だからと言って、もし感情をないがしろにしてしまうと・・・
例えば”笑うモーメント”があったとして、嘘で笑っているならば、目の肥えたお客さんには「この人は笑ってないな」と分かる。
「感情は本物にする」というのも、「信じ感じる」に繋がってくるんだと思います。

 

 

「自分ではなく、相手にフォーカスを置く」ダンスでの即興

>>リアルな感覚なんですね。ダンスの即興はどうでしょう??

ダンスは言葉がないので、一人で即興をするときは、音楽など外的要因をすごく重視しています。
もし二人の場合だったら、自分よりも相手にフォーカスを当てるようにしています。
相手がこう来たので自分はこういう風にと。
自分にフォーカスを置く悪い癖があるので「自分にフォーカスを置かない」ことを気にかけてやっています。

自分、自分、自分・・・と自分の世界を作るのではなく、二人の世界なんだから。
相手に重きを置かないで、自分ばかりに集中すると、相手の世界は死んでしまいますし。
二人の良い所が、一人の良い所の限界に追いつかない。
モノローグ以外は、相手にフォーカスする。
そうすると、二人のインタラクションが生まれて、それがシーンを作りあげていく上で重要なので。

 

>>TATWERKでの”KOMPANIE PROJEKT”のリハーサルも、半分は即興でしたね?

その場で作り上げています。

 

>>実際には、相手の感情にどう呼応していくんですか?

答えにならないかも知れませんが・・・
頭で考えないで、その場その場で来た五感で感じる情報を直接心に流して、そこから跳ね返させています。
そうしようと努力しています。

逆に頭で考えていると、返すテンポが遅れてしまって・・・それはちゃんと感じていないことだと、僕は思うので。
相手から来たものを、素直にすぅーっと流して、返して。
その中にオーディエンスを惹きつける「面白み」が有るのだと思います。

 

>>実際のリハを拝見して、とても集中して、楽しそうにしておられるのが印象的でした。

自分の知らない所、分からない所、まだ勉強していない所を学べる良い機会になっています。
やっているときは分からないのですが、終わってから考える。
相手がこういう事をして、自分はこういう動きをしたんだ!と・・・勉強になっています。

 

>>今回拝見したのは即興での動きでしたが、脚本がある場合「感情を身体で表現する」際に、どういう言葉で指示されているかはやはり重要ですか?

脚本があまりに曖昧な表現の場合や理解できない場合は、ディレクターに直接相談したり、自分で考えたものを用意し持って行って・・・
見てもらった後にそれに対してのフィードバックを貰うようにしています。