梅雨明けする7月下旬、平日に休みがとれた。以前から一緒に行かないかと誘われていた瀬戸内国際芸術祭を思い出し、早速調べてみた。

まず瀬戸内の島々を船で巡るという点が魅力的だ。移動手段が旅の醍醐味の1つになる。そして作品は世界各国のアーティストが参加し、今年新たに加わったものもある。多種多様な作品を一度に見る機会はそうそうない。その上、展示空間や利用施設である建築が同時に楽しめる。今や世界的建築家となった安藤忠雄の一連の美術館郡とそれに続く若手建築家の挑戦が見られる。そしてなにより作品を巡るという行為から身体全体で瀬戸内の美しい景観を楽しめそうだ。

旅の準備を始めた。

 

点在する現代アートを来場者が自由に巡る事で、自然とアートを一体となって楽しめる芸術祭が日本各地で開催されるようになった。今年、瀬戸内国際芸術祭は3年に1度の開催年を向かえ、春・夏・秋の3会期にて催しが始まっている。総作品数は200を超えるがここでは訪れた作品の中でも主要な数点にしぼりその印象を述べたいと思う。

 

旅の初日は東京から高松まで新幹線、高松港から高速船で小豆島の土庄港に到着したのは昼過ぎだった。出迎えてくれたのはチェ・ジョンファによる「太陽の贈り物」である。小豆島高速旅客船のりばから程近く、船の中からでもその姿が見える。

 

Kenさん(@k24da)が投稿した写真

 

オリーブの葉を模した金属板を円形にまとめ、王冠に見立てたフォルムが実に美しい。金属板は艶消しの金色で塗装されており、それぞれ違う絶妙な角度で取り付けてある事で上品な光の反射が見る時間によって異なり、様々な表情を見せる。また、近づいてよく見ると葉の一枚一枚に島民のメッセージが刻まれており、住む人とのつながりを意識して製作された事をうかがわせる。オリーブ栽培が有名な小豆島にふさわしいオブジェだ。

 

Junkoさん(@doramama35)が投稿した写真

 

港近くのホテルにチェックインし、バスで「道の駅オリーブ公園」に向かう。丘の中腹にある公園は青い実をつけた沢山のオリーブに囲まれ、白い風車小屋が印象的だ。

オリーブ記念館2階のカフェ『OLIVAZ/オリヴァス』で瀬戸内の穏やかな海が一望しながら冷たいオリーブティーが楽しんだ。ランチやディナータイムには小豆島産のオリーブオイルをふんだんに使用した料理が提供されるようだ。

 

 

二日目は旅のメインである直島に向かった。高速船から最初に目に付くのは草間弥生による「赤かぼちゃ」言わずと知れた直島の現代アート代表作である。

 

なぁさんさん(@c_funaba)が投稿した写真

 

近くに寄って初めて水玉の一部からかぼちゃ内部に入れる構造物である事に気づく。ビビットな配色とユーモラスな形状は芝の緑と海や空の青とあいまって強く印象が残る。

 

@linoa.juが投稿した写真

 

港近くにある「直島パヴィリオン」は建築家藤本壮介氏の金属製のネットを使用し多面体で構成した造形物である。直島の28番目の島として蜃気楼で海面に浮かぶように見える浮島現象をイメージしたようだが、昼間、特に日の高い時間に見たせいか表情にとぼしくあまり魅力的にみえない。おそらくHPの写真にあるような夜間にライトアップするか、日が傾くかで、面による陰影の違いや見る角度によるネットの粗密の重なりの効果が高くなり、立体感がでて魅力的に見えるのではないだろうか。見る時間を選ぶ作品である。

 

直島のフェリー乗り場「海の駅 なおしま」は妹島建築の特徴である「軽さ」が現れた建築である。華奢な印象を与える鋼製の円柱の上に大屋根がかかり、その下に売店や休憩所・トイレやロッカーといった所要スペースがガラス張りの箱となり散らばっている。所々に壁があるが(おそらく構造上必要だったのではと推測するが)鏡面張りとして周囲の景色が映りこみ存在感を消している。大屋根の下に入って感じたのは「暗さ」であるがこの暗さが明るい海原や周囲のオブジェの色を際立たせる効果をもたらしている。