ケルティック・ハープという木製の、豊かな音を奏でる美しい楽器があります。
そのハープを片手に、ベルリンで精力的にソロ及びユニットKOMOREBIでのライブに励むシンガーソングライター、蒼咲雫さん。
音楽と併せて、タロティストとしてヒーリングを提供するという多面的な活動が魅力的な彼女にお話を伺いました。
姫神、喜太郎、葉加瀬太郎、小松亮太、河井英里・・・リラクゼーション音楽がルーツ
まずは雫さんの、音楽的背景を聞いてみたい!
母も姉も音楽が好きで、わたしも3歳から16年間エレクトーンを弾いていました。
中学校の頃「神々の詩」っていう姫神のすごく良い曲を聴いて。それからはちょっと渋い中学生ですが、リラクゼーションに没頭してしまって、喜太郎さんとかも聞いていました。
エレクトーンのコンサートやコンクールでも、他の人がディズニーや久石譲さんとか話題の映画音楽を弾く中、わたしはヒーリング系の葉加瀬太郎さんや小松亮太さんをびっくりされながら弾いたりとかして。
そう言えばハープの音をエレクトーンでも選択して弾いていて、いい音だなーとはずっと思っていましたね。
高校生頃からは、MIDIの打ち込みで作曲を始めました。
MIDI!流行ってたよね!!
すごく流行ってた!そのころはゲーム音楽の耳コピとかも作っていました。
で、どんどんオリジナルのインスト曲をネット上で公開して行ったんです。
会社員の頃、あるときにCDにしたいな!って決めてから、同人音楽でCDを作り始めました。
最初のCDのこと、覚えてる??
今も持ってますよ。この一枚を作ったのは、自分にとって大切な始まりで良かったと思う!
切っ掛けは、わたしが大好きだったシンガーソングライターの河井英里さんが亡くなってしまったことでした。
彼女はアルバムを作っていた。でも、そのアルバムは完成せずに亡くなってしまったことで、わたしはすごく衝撃を受けました。
河井さんのお声がすごく好きだったのに、亡くなってしまったんだと実感した時に「わたしCD作らないと!」って思ったんです。
自分もいつか作れればいい、って思っていてはダメなんだな、と。
今じゃないと、ってこと?
そう。今じゃなきゃダメなんだな、よし、作ろう!と思って1年掛けて準備しました。
アートワークを描くソフトも持ってなかったしねー。
表紙も全部自分で描いてるの?雫さんは色々な側面があるね!!
や、そうだね、何か真っすぐじゃなくてすみません笑
実は”蒼咲雫”って名前は絵を描いていたときに使い始めてたんですよ。
素敵だわ。じゃあ本当に全部セルフプロデュースだったんだね。
ケルティック・ハープそしてドイツとの出会い
学生の時から創作を続けて来た雫さんだけど、ハープとの出会いについて聞きたいな。
エレクトーンはそんなに色々な場所にはない、ライブハウスやカフェ・バーにはない楽器なんです。
そういう場所にはピアノしかなくて、わたしはピアノをやってこなかったので、持ち運べる楽しい楽器がないかな?とずっと探していました。
ギターやウクレレとかも試しながらね。そうしたら、姉がハープはどう?って言ってくれて。
お姉さん!ハープって持ち運べるイメージではないですよ!笑
そう、ハープって大きくてトラックとか必要でしょ?まず候補にならないでしょ、そこ!と思ったんだけど。
でも調べたら、持ち運べる小さいサイズのものを見つけて。音も素敵だったから、やってみたいなーと思ったんです。
「教えてくれる人いないだろうな」とも心配だったんですが、それも調べてみたら実家の近所でハープ教室が始まっていることが分かって。
しかも個人レッスンも丁度始まるタイミングで、やります!ってなったんだ。
先生(田中麻里さん)は、たまたまドイツから帰って来た方でした。
お!今に繋がっている話だ!
そうなんです!めでたく田中麻里先生に習うことが出来て。レッスン中にドイツの話とかを聞くようになりました。
当時は、海外に行ったことが無かったわたしには「遠い国の話だ~」と思うだけだったんですが、気がついたら今は住んでますね笑
実際に習いだすと自分のハープが欲しくなって、会社を辞めた時に退職金で買うことになりました!
退職おめでとう。そしてハープは思ったより小さいね。これは何ハープ??
日本語だとアイリッシュ・ハープ、海外だとケルティック・ハープという言い方の方が知られています。
オーケストラなどで使われているグランド・ハープは40弦以上あるんですけど、ケルティック・ハープは多くても38弦くらいまでかな。
わたしが使っているのは、22弦です。
あと、大きな構造の違いは、上にバーが着いていて。
このバーはどう作用するの?
これは、ピアノで言えば白鍵・黒鍵の部分みたいな役割で。バーで半音上げることができるんですよ。
soundcloudで聞いてきたけれど、生で聞くとより東洋的というか、オーガニックな音がするね!
そうです!録音はやっぱりバックにシンセサイザーを使っているし、ミックスする過程で音質が変わってしまうので。
生で聞くと、ボディの木の共鳴が伝わるからでしょうかね。
あと、以前より調弦を替えていて、すこし低めにチューニングしているからかも。基本的なケルティック・ハープの主流のチューニングではないのですが、わたしがただやりたくてやってます!
”雫オリジナル”だ!ハープを始めてから、どんな音楽を求めるようになっていったのかな?
「雨露古城」を作る頃には、打ち込みのみの音に物足りなさを感じるようになったんです。もっと”生”感が欲しい、と。
そしてハープに出会ってからは、もっとヒーリングで癒しの、自己表現だけではなく色々な人にほっとしてもらえるような曲を作ってみたいと思うようになりました。
それで出来たのが、1stアルバム「Rosemarry」です。
ミニマル meets 癒し。ユニットKOMOREBIでの新たな音楽
雫さんはソロだけではなく、ユニットKOMOREBIでも活動している訳だけれども、相方のMorihide Sawada氏の楽器は?
スネアドラムです。
スネアドラム、だけ。
だけ、です。
シンプルだ!Sawada氏とは、どうやって出会ったの?
彼は東京で音響・オーガナイザーさんとして働いていて、わたしのライブの際に知り合いました。
元々わたし自身はヨーロッパには縁が無かったのですが、Sawadaの伝手でドイツやこちらの人々と知り合うこともあって。
2014年に3週間のヨーロッパツアーを企画して、嬉しいことに結構な数を演奏させてもらえたんです。それで得るものも多く、ヨーロッパに住みたいと思うようになりました。
じゃあツアーが、今の生活の切っ掛けだったんだ。Youtubeも観たけど、KOMOREBIの音楽はシンプルで実験的だね。ふたりで演奏することで、”蒼咲雫”名義の音楽とは違うものが出来ていると思う??
そうね、KOMOREBIは、お互いの良い所や大事にしている所を足した感じでやっています。
大事にしている所とは・・・
わたしだったら「癒し」の意味、Sawadaは「ミニマルな感覚」で、音を沢山出すのではなく空間を大事にすること。
とても日本人的だ!
そうです!その感覚は当時わたしには余り無くて。
案を出して行くうちにどうやったら合うかな、とか試行錯誤しながら音を作り上げて行った感じですね。
なるほど、だから少しエクスペリメンタルな響きがあるんだね。音楽は即興で作っているの?
わたしは元々エクスペリメンタルな音楽には浅くて、その要素は彼のおかげですね。
曲は半分即興、半分構成を決めて作っています。でもそれぞれのパートに、例えば「森」や「水」などのテーマを決めていて、ライブで展開しています。
スネアとハープとの音は別々で聞くと全く違う個性ですが、KOMOREBIというフィルターを通して聞くととても合ってますね!KOMOREBIの活動を通して、雫さんソロの音楽も変化するかも知れないと思う?
既にアートワーク一つとっても、かなり変わってきてますよ。
確かに!どんどんシンプルになってきているね笑